近年、発熱時には、解熱剤を使わない用が良いと言う考え方が広まってきました。昭和の時代には、熱が出ると、水枕や氷嚢を使い、また、冷たく濡らした手ぬぐいをおでこに乗せ、お母さんが氷水の洗面器に手をつっこみ、せっせと取り換えてくれる・・・と言うのが良く見られる光景でした。

 

当時は、これらの行為で、熱が下がると考えられていたようですが、今では、直接的な解熱効果がないことが知られてきましたね。ところが、大きく見ると、これは、解熱剤より効く、最高の特効薬だったのです。

 

今回は、感染性胃腸炎で発熱と嘔吐を発症した時の解熱について考えてみましょう。

 

 

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感染性胃腸炎で発熱と嘔吐がある時はまずどうする?

感染性胃腸炎の症状で良く見られるのは、下痢、嘔吐、吐き気、腹痛、発熱です。特に下痢は、体内に入った細菌やウイルスを排出しようとする免疫機能が起こすものなので、ほとんどの感染性胃腸炎に見られます。

 

夏場や、同じ職場、一緒に食事をしていた人などが、同じ症状を訴えた場合は、細菌による食中毒の恐れがあるので、すぐに病院へ行きましょう。

 

細菌性胃腸炎は、抗生物質によって効果的な治療法があるので、処置してもらいましょう。ウイルスによる胃腸炎には、特効薬はないため、その状態によって対処療法となります。

 

激しく嘔吐を繰り返す場合は、「ナウゼリン」などの制吐作用のある薬が処方されます。強い吐き気で経口が無理な場合は、座薬が処方されます。

 

感染性胃腸炎は飲める薬と飲めない薬がある?市販薬でも大丈夫?

 

ところが、これは体に入れば「ピタッ」と吐き気が止まる!! と出来ているわけではないのです。基本的に、体が嘔吐や下痢で、体の中からウイルスを排出しようとしているのを、止める薬は処方されないのです。

 

嘔吐を繰り返す時の処置とは?点滴は特効薬?

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薬を飲ませても吐き気は治まらず、何も食べられないし飲めなくなって、再び来院すると、点滴をしてくれますね。みるみるうちに体が楽になり、吐き気が治まってきます。

 

すると、「吐き気には点滴」と勘違いしてしまいますが、これは水分補給と栄養補給により、脱水症状が治まったことで、気分がスッキリしたと考えられます。

 

また、ウイルス性胃腸炎での嘔吐は、ほとんどが12~18時間前後で治まるため、タイミングの問題もあるかもしれません。点滴に「プリンペラン」制吐薬が入っていることがありますが、座薬で処方されたナウゼリンと効力は変わらないため、点滴だから効いたのだ!と言うのは勘違いです。

 

ケトン体が影響していることも考えられます。嘔吐が続くと、口から栄養がとれないため、困った体は脂肪を分解してエネルギーに変えていきます。

 

この体内の飢餓状態は、急激に起こることから、大急ぎで分解すると、本当に必要なブドウ糖より、不必要なケトン体が大量に生産されてしまうのです。ありあまったケトン体は、体にとって有害なものなので、嘔吐を引き起こします。

 

胃腸炎で嘔吐が起こり、さらにケトン体に追い打ちをかけられている状態です。そこに、ブドウ糖を点滴してもらうと、体は無理な脂肪の分解を中止し、ケトン体の生産は止まります。すると、嘔吐も無くなると言うわけです。

 

本来、「ナウゼリン」「プリンペラン」も嘔吐中枢に働きかけ、効果のある薬ですが、ウイルス性の胃腸炎では、あまり効果がないと言われています。嘔吐を止めるには、スポーツドリンクやOS-1などの補水液が一番効果的なのですが、口にすることも出来ない状態の時もありますね。

 

そんな時は、さらなる嘔吐を呼ばないために、点滴をしてもらうと、体は楽になります。同時に発熱もしている場合、体力や水分が奪われて、もっと早くふらふらになってしまいます。

 

そうなると、もう水分補給のことなど自分では調整できなくなってしまいます。脱水症状を防ぐためにも、再度病院へ行き、水分と栄養補給をしてもらうと、少し元気が出てきます。また、診察してもった安心感から、気持ちが落ち着きますね。

 

感染性胃腸炎の発熱に解熱は必要?

ウイルスを除去する際に出る熱について考えてみましょう。発熱は、免疫力を上げるために出ていることは、よく知られてきました。そのため、解熱剤で無理に熱を下げるのは良くないことも知られています。とは言っても、高熱が続くと、人は不安になってきます。

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嘔吐があり、点滴をしてもった後は、気分も良くなり、熱も下がり、一気に回復してしまう事があります。胃腸炎の時は、ウイルスを排出するために、下痢だけは少し続くかもしれません。

 

点滴で、発熱まで治まったのは、栄養と水分が十分に入ってきて、免疫力が活性化し、「熱を上げなくても、これだけ活性化すれば十分ウイルスを倒せる!」と体が感じたためです。

 

どうして体が発熱するのか、仕組みを見てみましょう。ウイルスが体内に侵入してきます。

 

すると、常に体内をパトロールしている「白血球」や「マクロファージ」などの免疫細胞が見つけて捕らえます。そして、「サイトカイン」と言われる伝達物質を作りだし、脳の視床下部へ「体温上昇させよ」と連絡するように放出します。

 

サイトカインは、「了解!!」とばかりに大急ぎで、脳へと向かいますが、ヒトの首の後ろあたりにある「血液脳関門」と呼ばれるところで、「ここからは侵入禁止」と通してもらえません。これは、脳を守るバリア機能のひとつで、信用ならないものは、脳に近づけないようになっているのです。

 

すると、サイトカインは「プロスタグランジンE2」と言う、ウイルスの情報だけを詰め込んだ物質を作り、関門を通らせます。使命をうけた「プロスタグランジンE2」は、無事視床下部へたどり着き、事の次第を報告します。

 

視床下部の体温調整中枢は、送られた情報をもとに、ウイルスの強さを計算し、体温のセットポイントを平熱から異常体温域へと変更させます。平熱が36度だった場合、セットポイントが39度に変更された場合、体は体温を3度上昇させるための行動をおこします。

 

  • 体の表面に近い血管を収縮し、熱が外にでないように防ぎます→そのため、体の表面温度は下がり、「悪寒」「鳥肌」が起こります。

 

  • 骨格筋を収縮させて震えることで、熱を発生させます (熱生産率 70%)→そのため、熱が出る前に、肩こりや首コリ、背中の張りなどの筋肉の緊張を感じます。39度に体温が上がると、前線では、活性化した免疫力たちが、ウイルスを倒すために、大活躍をしています。

 

「思ったより強敵!」となると、再び伝達が行き、40度、41度と熱は上がって行きます。すると、さらに活性化した免疫力が増え、死闘を繰り広げます。勝利を確信すると、「もう大丈夫」と伝達され、連絡を受けた体温調整中枢はセットポイントを徐々に平熱に下げていきます。

 

今度は、放熱です。

  • 体表面近い血管を拡張させ、熱を外に出します。
  • 汗腺から汗を出して、気加熱を使って熱を下げていきます。

具合が悪くなって、熱が出始めると、最初はガタガタ震えるほど寒くなり、その後、あるタイミングから、汗が大量にでてきますね。あれは、体が放熱を始めたということなのです。体は、自分で自分を守れるようにできているのです。

 

解熱剤で熱を下げようとした時、どこの部分の連絡を絶ち切ってしまっても、免疫力がうまく機能しなくなることがわかりますね。また、脳を守っている、血管脳関門は、脳の温度も守っていて、体が高熱を出しても、脳は1~2度低い状態を保てるようになっているのです。

 

そのため、高熱によって、脳が壊れてしまうような心配はありません。

 

言葉で書いてあると、発熱の仕組みは、まるでドラマのようですが、実際の高熱は「ふーふー」言って、とても辛いものですね。頭痛も起きるし、体も痛くなります。

 

そんな時に効果を発揮するのが、「水枕」や「氷嚢」そして、お母さんが何度も変えてくれる、おでこの手ぬぐいです。タオルだと、吸収が良すぎてしまうので、手ぬぐいの方が適しています。

 

寒気が止まってからは、体が熱くて体力も奪われ、頭痛も起きて、とてもキツいですね。冷たい、水枕や氷嚢は、気持ち良く、気分が楽になります。また、おでこの手ぬぐいを何度も変えてもらう事は、冷たい気持ち良さと、お母さんがいる安心感で、心が落ち着きます。

 

なんと免疫力は、「安心感」でも活性化するのです!!

 

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そのため、冷やしても熱は下がりませんが、安心感が生まれることで、免疫力の活性化を助けることになり、発熱期間を短くできるのです。病気は、一人暮らしの人の方が重症化しやすく、「さみしさ」や「不安感」が免疫力を下げていると言われているのです。

 

まとめ

嘔吐にしても、下痢も発熱も、体が自分で身を守るために起こしていることです。悪い細菌が入った時などは、薬によって退治できます。また、細菌は、脳に入ることがあるので、早めに対処しましょう。

 

発熱の仕組みには、すべての流れがあり、それをむやみに断ちきってしまうと、かえって治りが遅れてしまいます。

 

水分をたくさん摂って、早く元気になりましょう。お子さんが高熱を出した時は、安心させてあげると、早く治せることにつながります。

 

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