抗うつ薬の副作用で便秘になる事は良く知られています。この作用はアセチルコリンによる副交感神経への刺激を遮断することで起こります。

 

この遮断する働きを「抗コリン作用」といい、この作用を強制的に起こす薬を「抗コリン薬」と言います。

 

腸の働きは、副交感神経が支配しているので、抗コリン作用によって、ぜんどう運動が鈍くなり、便秘が起こります。ただし、うつ症状が現れている時には、すでに自律神経が正常に機能していない状態なので、薬の副作用以前に便秘が起きている可能性はとても高いです。

 

抗うつ薬は、すべての薬が副作用に便秘を起こすのでしょうか。今回は、抗うつ薬の副作用で起こる便秘について考えてみましょう。

 

 

 

抗うつ薬とはどんな薬?それが原因で便秘ってあるの?

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抗うつ薬と言うと、大変なショックを受けた後や、引きこもってしまっている状態、入院を余儀なくされるほど精神状態の不安定な人たちが飲む薬だと思っている方も、多いのではないでしょうか。

 

たしかに、何年も具合が悪く、長期にわたり薬を飲み続ける方もいますが、今では、社会生活を送りながら、短期間の服用で回復する人の方が多くを占めるように変わってきたのです。

 

また、以前は、「うつ」と言う言葉に対して、抵抗が大きく、「人に言えない」「人に知られたくない」などと言う意識が大きかったのですが、今は、自分から病院にいき、処方された薬によって、心の安定を取り戻す人は大勢います。

 

現代はストレス社会と言われ、子供から大人までストレスを抱えて生活しています。そのため、街中や公共施設の中にも、「うつ」を認識させるポスターなどが目立ちます。「うつは治る病気です」と言う意識が広まり、やっと誰にも言えなかった苦しみから、開放される人たちが増えたのです、

 

抗うつ薬の中には、「気落ち」「やる気が出ない」と言った軽度のうつ症状に良く効くものから、パーキンソン病などに大変強い効力を持つ薬まで幅広くあります。

 

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昔からある「三環系抗うつ薬」は、効き目も強いですが、特に抗コリン作用による副作用が激しく、同時に副作用に対する対処薬を飲む必要あります。

 

また、効き目の強い薬は依存性も高く、多少改善が見られても「持っていないと不安」「飲まないと不安」などから、薬から離れることが出来なくなってしまうケースが多く見られました。

 

その後、「四環系抗うつ薬」→「SSRI」→「SNRI」→「Nassa」と進化し、その重軽度によって、副作用が少ない薬が使われるようになっています。抗うつ薬は、さまざまな種類があるので、今回は処方されることの多い薬の作用をお伝えします。

 

抗うつ薬の副作用とはどんな症状?

三環系抗うつ薬は、効果が出るまでに1~2週間かかるのに対し、副作用はすぐに現れてしまい、薬の飲み始めは副作用に苦しむだけ、と言うことが起こりました。

 

主に起こる副作用は、「口渇」「便秘」「鼻づまり」「排尿困難」「動悸」「目のかすみ」「眠気」「倦怠感」「体重増加」「集中力低下」「記憶力低下」などです。この多くの副作用が起きてしまう理由には、「神経伝達物質の再取り込み阻害」の仕方にあります。

 

脳の神経細胞は、数が増えるのではなく、繋がることで広がります。もともとの数は乳児の時に大人と同じほどあり、知識や経験、体験を通じて刺激を受け、それがどんどん繋がって、神経細胞は網の目のように広がって行くのです。

 

その繋がり繋ぎ目部分を「シナプス間隙」と言います。神経細胞が刺激を受けると、神経終末(ニューロン)に電気信号が走り、次に広がるために、神経伝達物質がシナプス小胞に合成され、細胞を出ると同時に小胞からシナプス間隙に放出されます。

 

すると、神経伝達物質は、次の神経細胞の受容体(レセプター)にくっつき、電気信号を送ります。実際は神経細胞が刺激を受けてからここまで、1秒もかからない速度で起きてる出来事です。

 

神経伝達物質は、「拡散」「分解」「再取り込み」の道に分かれますが、うつ症状を起こしている場合、このシナプス間隙に存在する神経伝達物質の全体数が少なくなってしまっているのです。

 

そのため、「再取り込み」のために、神経細胞へと戻ることを阻害し、シナプス間隙に数を増やし、伝達作業を通常に戻すことが抗うつ薬の仕事です。

 

神経伝達物質には、「アセチルコリン」「ノルアドレナリン」「ドーパミン」「セロトニン」などの「アミン類」、また、「グルタミン酸」「グリシン」などの「アミノ酸類」、「エンドルフィン」などの「ペプチド類」などがありますが、三環系抗うつ薬は、「アミン類」全部を阻害してしまうため、うつとは関係ない「アセチルコリン」にまで影響を及ぼしてしまうのです。

 

なので、多くの副作用が起こってしまうのです。これを「抗コリン性」と言います。

うつ,薬,副作用,便秘出典:http://utsu.jp/cure/medicine/01.html

SSRIは、「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」、SNRIは、「セロトニン、ノルアドレナリン再取り込み阻害薬」と言われ、うつに関係ない神経伝達物質には影響を出さない薬なのです。そのため、今では第一選択薬として使われることが多くなっています。

 

神経伝達物質が再取り込みされるには、トランスポーターと言う取り組み口があるのですが、SSRIやSNRIは、セロトニンやノルアドレナリンのトランスポーターだけを選び、閉ざして再取り込みを阻害します。

 

そのため、「吐き気」や「眠気」が起こることはあるのですが、三環系抗うつ薬のように、「抗コリン性」の副作用は起こりにくいのです。アセチルコリンは副交感神経を刺激するものなので、阻害してしまうと便秘が起こりやすかったのです。

 

とは言っても、うつ症状は個人個人でその症状の違いが激しく、最初に処方した薬が、絶対に効果が出るとは、限りません。

 

また、再発防止などを考えて長期的な治療になることが多いため、薬がかわることも考えられます。さらには、抗コリン性の少ないSSRIやSNRIですが、人によっては、敏感に感じ取り、副作用として現れてしまう場合もあるのです。

 

抗うつ薬で抗コリン?アセチルコリンと便秘の関係って何?

アセチルコリンは、副交感神経を刺激する神経伝達物質なのです。そのため、副交感神経が作用することはアセチルコリンがないと、起こらないのです。

 

アセチルコリンの働き

  • 消化機能を高める
  • 血管の拡張(血圧を下げる)
  • 瞳孔の縮小
  • 唾液の分泌
  • 発汗

アセチルコリンの働きによって、胃腸は運動を促進し、通常の排便が起こっています。抗コリン性の薬を飲むと、この作用はなくなり、排便困難が発症してしまうのです。

 

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ただし、抗コリン性の薬は悪い効果ばかりではありません。うつ症状を起こしている場合、すでに副交感神経に異常が起き、過敏性腸症候群の便秘を起こしている確率が高いのです。

 

この便秘は、強いストレスによって自律神経がバランスを崩し、副交感神経が異常に興奮してしまい、腸に痙攣が起きて、便秘になり、強い腹痛を起こす事があります。そのような場合は、副交感神経を鎮めるために、「抗コリン性」を持つ薬を選びます。

 

薬を選ぶと言うことは、「この病気だからこの薬!」と言えることばかりではなく、特に「うつ」と言う、デリケートな病気の場合は、その原因や症状の起こり方もそれぞれなので、自分に合った薬で治療していくことになるのです。

 

まとめ

抗うつ薬は、「心の病気」を治すと言うものではありません。崩れてしまった自律神経のバランスを取り戻すために、神経伝達物質の働きを高めるものです。抗うつ薬で治療することで、自分を弱い人間だと勘違いする人がいますが、それは違うのです。

 

大きなショックや悲しみから自律神経のバランスを崩してしまう人もいますが、自分では気づかないうちに、バランスが崩れていくこともあるのです。これは、誰にでも起こりうることです。「私は絶対にならない!」とは、言いきれるものではありません。

 

また、若い人の過剰なストレスによるものもありますが、加齢による自律神経の乱れは、止めることはできません。そのためにも、自分のできる範囲の健康維持はしたいですね。

 

それには、「便秘をしないこと」です。腸は健康のバロメーターです。抗うつ薬の副作用でも便秘はありますが、自律神経の機能が弱まると便秘が起きやすくなります。腸と脳は密接に関係しているので影響が出るのです。

 

そのため、反対に腸を元気にしておくことで、脳へのストレスの影響を最小限に食い止めることは可能なのです。「便秘をしないこと!」これが心身ともに健康でいる秘訣ですね。