緊張性の病気は数多くあります。中でも腹痛や下痢はフレッシュマンなどの若い年齢層に多く見られる症状です。
翌日のテストや大事な会議、商談などの事を考えただけで、腹痛や下痢を起こす人は多いのではないでしょうか。
緊張はストレスとなって襲い掛かってきますが、どちらかと言うと女性は緊張性の頭痛や嘔吐、めまいなどの症状に出る事が多く、腹痛や下痢は男性の方が出やすい症状です。
そこで今回は、緊張からくる腹痛や下痢の対処法、また病院での治療法について詳しく解説いたします。
腹痛や下痢は緊張からやってくる!
腹痛や下痢を起こす緊張性の病気を考えた時、最初に思い浮かぶのは「過敏性腸症候群」です。この病気は、消化器系に病変が見られないのにも関わらず、腹痛や下痢を繰り返します。
緊張がストレス要因となり、徐々に緊張を伴うほど強いストレスでなくても下痢を起こすようになってしまいます。
また、同じように緊張からくる腹痛や下痢を起こす病気には神経症状が伴う「不安神経症」も考えられます。こちらは、女性に多く見られます。
不安神経症は腹痛や下痢とともに、多汗、赤面、手の震えなどが発症するため、人前に出る事が嫌になり社会生活を脅かす原因となってしまうことがあります。
いずれも初期段階で気づいて、治療できていれば回復できないものではありません。
とは言っても、血が出たり高熱が出るわけではないので、中々病気として向き合う気持ちにならず、ほとんどの人がどうにもならないほど悪化してから病院に駆け込むことになります。
世界的に見ても、日本人は緊張性の病気を抱えやすく、それには「失敗が怖い」「恥をかきたくない」などの消極的な考え方が作用していると考えられます。
その上きちんと治療する人が少ないのも、「小さいことでくよくよしていると思われる」「人に助けを求められない」などの性質が邪魔をして、早期の段階で病院行かないことも原因のひとつと考えられます。
「何事も手を抜かずに完璧で、なおかつ控え目であることが美徳」と言われ代々育ってきた日本人のDNAは、食事も生活スタイルも欧米化した現代社会の中で、バランスをとるのために四苦八苦しているのかもしれません。
特に精神的にダメージを受けたために病院に行くと言う事が未だに浸透していない状態で、誰にも言えず腹痛と下痢を抱え込んでいる人はとても多いのです。
まず、同じような症状を持つ人が大変多いと言う事を知って安心してください。日本人の4人に1人は過敏性腸症候群と言われています。
過敏性腸症候群は下痢症状を起こす他に、「便秘型」「ガス型」と言われる症状があります。そのため、下痢ではなくても、精神的なダメージから腸に異常が起こっている人はたくさんいるのです。
「下痢型」は男性、「便秘型」「ガス型」は女性に発症しやすいと言われています。
周りを見渡したら、誰か一人は同じような苦しみを経験したことがあると思ってください。軽度のうちは気持ちを楽にすることで症状も軽減されます。
学校や会社行くことを考えただけで腹痛が起きたり、電車に乗るだけで下痢に悩まされるようになったのなら、早急に過敏性腸症候群(IBS)の専門医に相談してみる事をお勧めします。
IBSは、本人にとっては「ただの腹痛」「ただの下痢」などではなく、とても辛くゆううつな症状です。
同じような苦しみをもつ人たちの声を聞いたり、専門医の情報などを確認できる専門サイトもあります。もしかしたら・・・と思う人は、セルフチェックを利用して判断してみるのも良いかもしれません。
不安症についても同じです。緊張などの精神的なダメージが体に異常を起こす場合は、投薬で不安を取り除かない限り自力では戻せないこともあります。
長期的に我慢し続けてしまうほど、投薬治療を始めると薬に依存するようになりやすいので良くありません。早めに医師に相談して、軽度のうちに治すようにしましょう。
緊張性の腹痛や下痢の対処法や治療法は?
緊張性の腹痛や下痢の悪いところは、「どうしよう」と思えば思うほど、それが新たなストレスとなり最悪の悪循環を生みだしてしまうと言う点です。
「気にしない事!」「ストレスにしない事!」と言われても、これは性分なのでどうすることも出来ません。また、「気にしないようにしなくちゃ!」と思う事が良くない結果となることもあるので、無理も厳禁です。
一番良いのは、周囲の信頼できる人に知らせてしまうことです。症状を理解してもらえると多少気持ちに余裕ができます。とは言っても、それだけで腹痛や下痢がピッタリと止まる事はないので回復するわけではありません。
なかなか言える雰囲気ではない状態であれば、病院できちんとした治療を受けることが必要です。とにかく一人で抱え込むことが悪化の原因なのです。
では病院に行くとどんな治療を受けることになるのでしょうか。
過敏性腸症候群の場合、生活を整えて腸への刺激やストレス耐性を弱める原因を減らすのが治療の基本となります。
この症状は、どんなに良い薬があっても、自分が症状の原因を自覚して減らす努力をしなければ回復することはありません。
- 睡眠不足
- アルコールの摂り過ぎ
- 食生活の乱れ(脂質と糖質に偏った食事など)
- 香辛料の入れすぎ
- 体を冷やす
このようなことを改善する姿勢が大切なのです。上記のような生活をしていると、免疫機能が低下してストレス耐性も弱くなります。残念ながら、過敏性腸症候群の人は症状を悪化させていく生活をしている事が多いのです。
これらを注意した上で、腹痛と下痢の症状を抑える薬で治療します。
- セロトニン5HT3受容体拮抗薬
セロトニンは腸を動かして消化活動をするためにとても大切な役割を持っています。ところが、これがひとたび過剰に分泌されるようになると、運動が激しくなりすぎて下痢を起こしてしまうのです。
過敏性腸症候群の人は、ストレス耐性が弱くなっているため、脳から送られるストレス信号をキャッチしやすいのです。信号をキャッチすると腸の粘膜はセロトニンをどんどん分泌してしまいます。
これは、セロトニンの役割のひとつにストレス回避があるためで、本当は脳で分泌されるセロトニンだけがもっと分泌されると良いのですが、同時に腸のセロトニンも大量に分泌されてしまうのです。
セロトニン拮抗薬は、増やしたり減らしたりすると言うより、正常の量を保ことが目的です。ただし、この薬が処方されるのは男性のみで、女性には激しい便秘などを起こす副作用があるため処方されません。
- 抗不安薬
精神的なダメージが大きい場合は、抗不安薬が処方されます。ただし、これは人によって「合う薬」ばかりではありません。
目に見えない傷を癒す薬は、たとえ医師でも選ぶのが難しい上に、1つの薬を2~3週間飲み続けないと効果があるのかないのかわからないので、治療に時間がかかると言う難点もあります。
効果がなければ、次の薬にかえてみる・・・と言う事を繰り返すことになります。また、良くなったりまた再発したりすることもあり、回復までの道のりは単純なものではありません。
そのため、悪化して社会生活に影響が出るような事態になる前に治療を始める事が大切なのです。
その他、過敏性腸症候群の投薬治療としては「高分子重合体」「消化管運動調節薬」「抗コリン薬」「乳酸菌製剤」などが使用されます。
ビオフェルミンなどの整腸剤を根気よく飲み続けることでも改善は見込まれます。
もしかしたら自分は過敏性腸症候群ではないかな・・・感じたら、ビオフェルミンで整腸しながら生活を見直すことで悪化を防げる可能性があります。
不安神経症の場合は、さらに慎重に薬を選びます。病気の判断基準として6か月間にわたる継続的な症状が認められなくてはなりませんが、それまで一切の治療が出来ないわけではありません。
また、不安神経症の場合、症状は腹痛と下痢ばかりではなく、多汗や震えなど、人に見られるとさらに緊張度が上がり症状の悪化が伴うため、心無い指摘を受けたりすると人前に出て行けなくなってしまうことがあります。
医師に相談することも治療のひとつだと考えて、病院に足を運んでみると良いかと思います。
まとめ
腹痛や下痢は、「緊張」と言う大きなストレスが原因で起こることがあります。
過敏性腸症候群や不安神経症などは、精神的なダメージによって腹痛と下痢が繰り返し襲ってくるのです。
「緊張するとお腹が痛くなる」と言った症状は大昔からありますが、近年は重症化する傾向にあり、どんどん若年化しているのも問題です。
過敏性腸症候群は専門のクリニックがあるほど多くの人が苦しんでいる病気です。自分一人で抱え込まず、専門医の診断を仰ぐことで回復に向かって、一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。