突然の下腹部痛(特に左側)が起こり、下痢に伴って鮮血が出た場合は、「虚血性大腸炎」の疑いがあります。

 

大腸の専門医であれば、これらの症状だけで判断がつきますが、同じような症状を起こす病気を除外しながら病気をしぼっていきます。

 

ほとんどの場合が一過性のもので、予後はよいものです。ですが、「狭窄型」や「壊疽型」になると緊急手術が必要となり重篤化するケースもありますので予断は許せません。

 

そこで今回は、下痢をしたら鮮血の血便が出て、腹痛もある病気について詳しく解説いたします。

 

 

下痢をしたら血便・鮮血が・・・腹痛もある病気は何?

下痢,血便,鮮血,腹痛鮮血便がでると、安易に痔だと判断して放置することがありますが、これはもっとも危険な判断です。

 

下痢の時に下血した!この原因で考えられる事とは?

 

赤黒い血便が出たときは重病であり、鮮血便の場合はたいしたことない病気であると決めつけないようにしましょう。

 

特に40歳を過ぎている人は、これを機会に大腸の検査をお勧めします。大腸は年齢とともに疲労がたまり、何かしらの欠陥が起こり始めているためです。USPTFTという世界標準で「いつ病気を調べるべきか」という推奨では、50歳以上は全員が大腸がんの検査をするべきだ、と推奨されていますが、症状があるならその前にも行っておくとよいでしょう。

 

実際に鮮血便で病院に行った場合、痔の形跡が見えたとしても年齢的に判断して大腸内視鏡検査を勧められることがあります。

 

これは、たとえ痔の形跡があっても、そうとは限らないことが増えてくる傾向を考えての判断です。では、実際に下痢と鮮血便そして腹痛を伴う病気はどのようなものがあるのでしょうか。

 

虚血性大腸炎

虚血性大腸炎は3つのタイプに分かれていて、一番多いのが「一過性」で65%、「狭窄型」が25%、「壊疽型」10%ほどの確率です。

 

一過性や狭窄型で軽度の場合は、絶食と安静、点滴によって改善されますが、狭窄が著しい場合や壊疽型については、腹膜炎などに進行する恐れがあるため、緊急に外科的手術が行われます。

 

-虚血性大腸炎の原因-

体を蝕む病気の中には多くの「虚血性」と言われるものがあります。心筋梗塞や脳梗塞などに代表されるように、血管が詰まってその先の部分が虚血してしまうのです。

 

虚血性大腸炎も、腸の血管が詰まったり潰れたりして血液が流れにくくなり起こります。動脈硬化や高血圧が関係しているため高齢者に多いのですが、若い年齢層に発症しないわけでもありません。

 

これは欧米化した食事をして、消化の時点で腸からでた腐敗ガスが血管内に侵入することも影響しています。便秘症の人がなりやすいこともあり、常に硬い便が詰まることで血流を阻害していることも考えられます。

 

-虚血性大腸炎の症状-

ある時突然左下腹部に激しい痛みが起こります。その後下痢と鮮血便が起こるのが典型的な症状ですが、その現れ方は人それぞれで、意外とまちまちなのです。

 

すべてが同時に襲ってきたと言う人もあれば、腹痛のあった翌日になって鮮血便が大量に出たと言う人もいます。

 

多くの人が同じなのは腹痛が起こる場所で、下行結腸部分かS状結腸部分に炎症が起きることが多いため左下腹部に強い痛みを感じます。鮮血便はティッシュにつく程度の人もあれば、便器内が真っ赤になるほど大量に出血する人もいます。

 

下痢についても最初は軟便で徐々に水様便になる人や、最初からジャージャーと止まらない勢いで下痢をする人もいます。大腸内では、粘膜のむくみや無数の発赤性のびらん、または腸管にそった潰瘍などがみられます。

 

-虚血性大腸炎の治療法-

先にもお話した通り、ほとんどの場合が一過性の虚血性大腸炎です。

 

軽度の虚血性大腸炎は腸を休めるため「絶食」することが一番の治療法になります。特に薬を処方されない事も多く、絶食と回復食、安静によって1週間ほどで軽快します。

 

鮮血便が長く続いたり、壊疽型と判断された場合は緊急に手術が行われます。血流が滞ったために壊疽してしまった部分を放置すると、細胞がどんどん死んでしまい腹膜炎を起こすなど一気に死亡率が50%となってしまうのです。

 

そのため、鮮血便は痔だと勝手に判断せずに、内視鏡検査によって医師に確認してもらうことが大切なのです。治療が可能だった病気を素人の勝手な判断でみすみす死亡率の高い病気へと変えてしまうこともあるので要注意です。

 

治療後は再発予防に努めましょう。原因が便秘だった場合は排便困難を起こさないような食生活を心がけなくてはなりません。また、高血圧や糖尿病、動脈硬化が見られる場合はきちんと医師のもとで治療を続けましょう。

 

下痢で鮮血便と腹痛・・・虚血性大腸炎以外の病気は何がある?

虚血性大腸炎と似たような症状が出る病気は、「薬物性腸炎」「大腸憩室炎」「潰瘍性大腸炎」「クローン病」などがあります。

 

下痢・腹痛・発熱・悪寒・・・この症状から考えられる病気って何?

 

「薬物性腸炎」は主に抗生物質を飲み続けた人が副作用として腸に炎症を起こしてしまい発症します。そのため、病院に行くと飲んでいる薬の有無、どんな薬なのかを確認します。

 

「大腸憩室炎」も大腸の病気の中では、起こりやすい病気です。腸壁に憩室といわれる風船のようなふくらみができるのですが、それだけでは特に問題はありません。

 

ただし、その中に便となるはずの消化物が入り込んで腐敗したり、細菌感染したりすると、憩室内で炎症を起こします。大腸憩室炎は腹痛が起こらない場合もあるため、虚血性大腸炎よりも「痔」と勘違いして悪化させてしまう傾向にあります。

 

もしも大腸憩室炎を放置して室壁が穿孔(穴が空く)してしまうと、排泄物として腸内に溜まっているものが体内に流れ出してしまい、敗血症などで死亡してしまう可能性もある怖いものです。

 

そのため、こちらも勝手な判断はせずに必ず病院へ行くようにしましょう。

 

「潰瘍性大腸炎」「クローン病」は2つで「炎症性腸疾患」と呼ばれ遺伝性が高いと言われる病気です。そのため、まず近親者に大腸の病気を患った人がいる場合は確率が高くなります。

 

2つとも長期的に治療していくことが必要で、国の難病指定とされている病気です。判明されていないことが多く、原因も遺伝性だけではなく、食生活が影響しているとも言われています。

 

以前の日本ではあまり発症率が高い病気ではなかったのですが、欧米化した食生活とともに増加してきた病気です。虚血性大腸炎ほどに下痢や鮮血便が典型的ではなく、ほとんどわからない程度の場合もあります。

 

特徴的なのは、20代の発症率が高いと言うことです。他の年代でまったくないということはありませんが、20代は圧倒的です。

 

クローン病は口から肛門までの消化器官すべてが発症部位となり得る病気のため、あちらこちらに炎症が起こります。特に好発部位と言われるのが、小腸と大腸の接続部付近の「回盲部」と呼ばれる部分です。

 

回盲部に炎症が起こった場合、肛門から遠いので血便は鮮血ではなく、やや赤黒い便となります。安定時の主な治療は食事制限となり、自己管理の徹底、また周囲の協力が必要な治療法です。

 

まとめ

下痢をしたら鮮血便が出て、腹痛もある場合、「虚血性大腸炎」の疑いがあります。さまざまな要因から腸が虚血し、その先の部分に血流が行き渡らなくなり炎症を起こしてしまうのです。

 

ほとんどが一過性のため、治療は絶食と安静となり予後の良いものですが、狭窄が激しい場合や壊疽型の場合は外科的な緊急手術を行います。

 

軽度の虚血性大腸炎は1~2日で鮮血便は止まります。だらだらと長く続いたり、大量の出血があった場合は大至急病院へ向かいましょう。

 

腸の炎症は重篤になると「穿孔」することがあるので怖いのです。腸内の毒素が体内に回ってしまうと敗血症などで命を落とすことになりかねません。

 

また、鮮血便が出ると勝手に「痔」であると判断することは、もっとも危険です。「痔」として病院で治療しようと考えたのなら、問題が別の場所であればわかるので良いですが、放置することはいけません。

 

たとえ「痔」だとしても、早めに治療してしまえばひどくならずに済むのです。

 

「薬物性腸炎」「大腸憩室炎」「潰瘍性大腸炎」「クローン病」などの可能性もありますので、下痢と鮮血便、腹痛が起きた時は病院で検査してもらうようにしましょう。