昔は、ガスの多い消化管(小腸や大腸)では画像が鮮明にみえず、超音波検査(腹部エコー)は不向きとされていました。というのも、超音波は空気が多い所では、空気があると超音波がうまく通らず画像が見えないという欠点があり、腸管は画像として見えにくい臓器と考えられ、エコーを当てられる機会が少なかったのです。

 

しかし、近年は腸管のエコーも積極的に行われるようになっています。その理由は、正常か異常かを判断すればよいというように、考え方が変わってきたからです。つまり、ガスで画像が不鮮明であれば正常な腸管であり、逆にガスが切れている所や、ガス以外の像が見えていれば異常がある可能性が高いという逆転の発想です。そして、病気の診断のために利用できるようになってきたことから、腸管の超音波検査が普及しています。

 

小腸・大腸などの消化管の壁は5層の構造からできています。超音波検査の特徴は、この薄い腸管壁の層構造を観察するのに優れています。そのため、それぞれの病気についても、最近では超音波で診断できるようになってきています。

 

超音波のメリットは、「放射線被ばくがない」ということがあげられます。レントゲンやCT検査ではどうしても避けられない放射線被ばくが避けられるため、特に子供を中心に積極的に行われるようになってきています。

 

 

 

腹痛を起こす代表的な小腸疾患(十二指腸の超音波所見)

小腸は超音波検査で観察すると活発な蠕動運動がみられますので大腸と鑑別できます。つまり活発に動いていれば小腸と考えることができます。消化管エコーはガスがあるところは全体的に白っぽく映り、炎症等がある場合は黒く映ります。その黒く映る部位を注意深く観察していきます。

 

小腸の代表的な疾患といえば十二指腸潰瘍です。十二指腸潰瘍では限局性の壁肥厚をみとめます。超音波検査は層構造を観察するのが得意ですので、壁肥厚の程度や、壁に潰瘍があるのが観察できます。超音波検査を行うことで内視鏡を行う前に、十二指腸潰瘍が穿孔を起こしていないか知ることができます。また、小児など内視鏡が難しい患者さんにも検査が可能であり非常に有用です。

 

 

腹痛を起こす代表的な大腸疾患(憩室炎の超音波所見)

腹痛を起こす大腸疾患で多いのが大腸憩室炎です。憩室は大腸の壁の一部が外側に膨らんだ袋状のものを指します。この袋が感染したり、炎症が起きたりすると憩室炎になります。

 

大腸憩室炎診断の特徴はピンポイントの痛みで、患者さんが痛みを訴えるところにエコーをあてると憩室の炎症像がうつります。炎症を起こしている憩室は超音波検査では黒く映ります。黒く映る箇所を観察すると、腸管壁から腸管の外へ袋状に突出しているのを認めます。また、憩室は内部に糞石をしばしば伴い、超音波検査では輝度の高い白色のエコー像として認められます。

 

 

感染性腸炎の炎症部位(感染性腸炎の超音波所見)

腸の疾患で最も多い感染性腸炎では、超音波検査を行うことで炎症の部位を特定することができます。炎症部位を特定することで、感染性腸炎の原因を予測できることです。感染性腸炎は、ウイルスによる腸炎や、細菌による腸炎に分けることができ、症状のある部位によってどちらの可能性が高いか判断できます。

 

典型的なウイルス性腸炎では、壁の肥厚は目立たず、腸液の貯留による腸管の軽度拡張がみとめられます。また、超音波検査はリアルタイムの画像がみられるため、蠕動運動が減弱しているのも観察できます。

 

一方、細菌性腸炎では大腸に腸管壁の肥厚を認めます。またその肥厚の分布からある程度、原因菌を予測することも可能です。例えば、腸炎ビブリオではしばしば上行結腸に軽度から中等度の炎症を認めます。また、サルモネラ腸炎では回盲部からS状結腸の広範囲に強い炎症を認めることが多くあります。

 

症状に加え、超音波検査により炎症の分布を知ることでこのような場合は、特に便培養検査の意義があると判断できます。超音波検査をすることで、早期に原因を絞って治療を開始することができるのです。

 

 

小腸・大腸での超音波検査の意義

超音波検査が有用な小腸及び大腸の疾患についてお話ししました。超音波検査の観察のポイントは、小腸・大腸どちらでも同じで、ガスで見えにくいのを正常として異常を探すということです。また、細かな層構造の観察やリアルタイムでの観察などが超音波検査の利点であり、下痢や腹痛の原因の早期発見・治療の一助となります。