シゲラ(細菌性赤痢)は、経口感染する急性腸炎で、日本でも発展途上国からの帰国者などから患者が多く発生しています。衛生環境の良くないインド、インドネシア、タイなどのアジア地域での感染が多く、衛生水準の高い国では発生率は減少してきています。

 

シゲラはどのような菌?

1898年、志賀潔(シガキヨシ)によって発見され、その名にちなんでShigellaという属名が付けられました。これは、学名に日本人研究者の名前が付いているただひとつ病原菌です。

 

赤痢菌には、A群(志賀赤痢菌;Shigella dysenteriae)、B群(フレキシネル菌;S.flexneri)、C群(ボイド菌;S.boydii)、D群(ソンネ菌;S.sonnei)の4種があり、A群は最も症状が重くなることが多いとされています。

 

シゲラに感染する動物は人や一部の猿に限られており、輸入ザルが感染源になった例もあります。患者や保菌者の糞便、汚染された手指、食品、水、ハエ、器具などを介して直接、または間接的に感染します。人から人へ経口的に感染するので、学校・福祉施設・宿泊施設など人が多く集まる場所で集団感染になることがあります。

 

日本だと、海外で感染して日本で発症するのが60%前後と言われています。インド、インドネシア、中国。フィリピン、カンボジア、バングラディッシュ、ベトナムなどの報告が多くそれらの国では特に注意しましょう。

 

10~100個と少ない数で感染するため家族内での二次感染は40%にもなります。発展途上国では患者の約80%が10歳未満の子供であり、日本でも戦後は同じような状況でしたが、衛生環境の向上とともに1970 年代後半から日本国内での感染者は激減し、現在では国外での感染が70~80%を占めています。

 

シゲラ(細菌性赤痢)の症状は?

倦怠感、悪寒を伴う急な発熱、水様性の下痢がみられます。発熱は1~2日続き、腹痛、しぶり腹(テネスムス・裏急後重とも呼ばれ便意があるのに排便がなかったり、便をしたい感じがあっても少量しか出ず頻回に便意をもよおす状態)や、膿粘血便(下痢便に膿・粘液・血液が混じる)がみられることが多いです。赤痢という名称は、この血が混じった赤い下痢が由来となっています。

 

左下腹部の痛みが出る場合が多いといわれています。

 

熱が出て1-2日ほどで熱が下がることが多く、その後に下痢が出る経過になることが一般的です。

 

シゲラ(細菌性赤痢)の原因は?

患者の便には1gあたり100万~1億個の赤痢菌が含まれており、便から出てきた赤痢菌が口から入ることで感染します(経口感染)。保菌者との直接の接触や、赤痢菌で汚染された食べ物・水・器具を介して人から人へ感染します。

 

赤痢菌により汚染された水の中での水泳、保菌者による調理などで集団感染が起きることがあります。

 

 

シゲラ(細菌性赤痢)の潜伏期間は?

1~8日とされていますが、多くは4日以内に発症することが多いです。

 

シゲラ(細菌性赤痢)の検査の方法は?

便を採取して、病原体を分離・同定することによって診断されます。迅速検査として、菌の遺伝子を検出する方法も開発されています。大切なことは、抗菌薬(抗生物質)を投与される前の便であるかどうかで、抗生物質を使用している場合は便からシゲラが検出されにくくなるため、飲んでいる場合には担当医にその旨を伝えましょう。

 

少し専門的な話になりますが、この赤痢を疑った場合は、培養の培地の種類を増やすことが必要なことがあるため、受診した病院で、海外から帰ってきた後の症状であることをきちんと伝えましょう。

 

感染症法では、三類感染症に定められており、医師は診断後直ちに最寄りの保健所に届け出ることが義務付けられています。

 

シゲラ(細菌性赤痢)の治療方法は?

軽症の健康な成人の場合には抗菌薬は使用せず、対症療法のみで回復することが多いですが、感染者には原則的に抗生剤を使用することが勧められます。他の人への感染防止の観点からです。

 

症状が重い場合は抗菌薬(成人はニューキノロン系、小児はホスホマイシン)を5日間内服します。また整腸薬や脱水症状を補う補液(点滴、経口輸液)を行います。下痢を止めると菌の排出ができなくなるので下痢止めは使いません。

 

最初の治療終了後48時間以降24時間以上の間隔で2回の糞便検査を行い、2回連続で陰性になれば病原体がいないとみなされます。

 

感染拡大防止のため、保健所により入院の勧告や措置が行われ、指定医療機関での入院治療が行われる場合もあります。

 

シゲラ(細菌性赤痢)はうつる感染か?対処方法は?

少しの菌数によって感染するため、拡大しやすい感染症です。特に小児や高齢者は重症化しやすいので注意が必要です。

 

日本で発生している患者の過半数は国外(発展途上国)での感染であり、国内感染については国外感染者からの二次感染や輸入食品からの感染が原因とされています。

 

現在のところ有効な予防ワクチンはありません。感染予防としては、十分な加熱(75℃・1分以上)や石鹸・消毒剤による手指消毒が基本です。特に衛生環境の良くない国での生水・氷・生の魚介類・生野菜・カットされた果物などの摂取や水泳などは避けましょう。