エルシニアという菌は腸内細菌の中のエルシニア属に属している細菌という意味で、その中でも腸炎を起こし病原性があるのは

・エルシニア・ペスチス(Yersinia pestisペスト菌)
・エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)
・エルシニア・シュードツベルクローシス(Yersinia pseudotuberculosis偽結核菌)

の3種類です。

 

エルシニア・ペスチス (ペスト菌)は黒死病として知られている全身性の感染症で、過去何度も数千万人という単位で人類を死亡させてきましたが、現在は地球上から絶滅したと考えられています。

 

今回はペストではなく、食中毒の原因となるエルシニア腸炎(エルシニア・エンテロコリチカ、エルシニア・シュードツベルクローシス)について説明します。

 

エルシニアに汚染された食物や水を摂取することにより経口感染します。また、感染した動物との接触や、感染した動物の糞便との接触によりうつることもあります。

 

エルシニア腸炎の症状は?

エルシニア・エンテロコリチカ

エルシニア・エンテロコリチカにより起こる腸炎の主な症状は、腹痛・嘔吐・下痢・発熱です。

 

乳幼児は、腹痛や下痢などの胃腸症状のみのことが多いですが、年長児は右下腹部痛を伴うことが多く、虫垂炎と間違われることがあります。腸管膜リンパ節炎が見られることもあります。

 

下痢は長引くことがあります。1、2週間ほどの長い間下痢が続くこともあり、血便も出ることがあります。

 

成人では腸炎だけではなく、関節炎や結節性紅斑(下腿から足首にかけて、ぶつけるところにできる痛みのある赤い斑ができて、硬いしこりもある状態)が出現することもあります。

 

 

エルシニア・シュードツベルクローシス

エルシニア・シュードツベルクローシス の主な症状は、腹痛・嘔吐・下痢・発熱・発疹・咽頭炎などです。

 

乳幼児の感染が多く、発疹・紅斑・落屑(回復期に指先の皮膚が脱皮するように1枚の膜となってはがれ落ちる)・眼球結膜の充血、いちご舌(赤くはれて舌の表面のぶつぶつが目立つ状態)・リンパ節腫脹などが見られ、川崎病と似た症状が出るため川崎病の原因の1つと考えられていたこともありました。

 

また、急性間質性腎炎を起こし急性腎不全になることもあります。免疫不全のある人は敗血症・髄膜炎・骨髄炎を引き起こすこともあります。

 

 

エルシニア腸炎の原因は?

豚・牛・犬・猫などの動物が保菌しており、エルシニアに汚染された食物や水(井戸水など)を摂取することにより経口感染します。

 

また、保菌している動物との接触や、糞便を介してうつることもあります。

 

エルシニアの菌は、4℃程度の低温でも増殖することができるため、冷蔵庫で保管していても菌は残ってしまいます。また、寒いところでも残るため、他の食中毒とは違い冬場でも多く発生するという特徴があります。

 

 

エルシニア腸炎の潜伏期間は?

1~11日といわれ、潜伏期間はかなりの幅があります。

 

エルシニア腸炎の検査の方法は?

基本的には便を培養・分離して菌を特定します。

 

また、超音波・CTなどの画像検査を行うこともあり、虫垂炎との鑑別診断に有効です。

 

参考:超音波で細菌性腸炎を見るとき

エルシニア腸炎の治療方法は?

ほとんどの場合食事制限・適切な水分摂取や安静などで自然治癒する傾向にありますが、下痢・嘔吐が続くことによる脱水には注意が必要です。重症化した場合は、抗菌剤の内服や輸液を行います。

 

急性腎不全を合併した場合は、水分や電解質の管理を行います。

 

その他の合併症に対する治療も症状に合わせて行います。

 

エルシニア腸炎はうつる感染か?対処方法は?

冷蔵庫など低温でも増殖するため、賞味期限を過ぎたもの食べないようにしましょう。

 

特に豚肉は注意が必要です。肉を調理する場合は中心部までしっかりと熱を通しましょう。

 

生肉を調理した包丁やまな板は熱湯や消毒剤で消毒し、他の食品に菌がうつらないようにすることも重要です。消毒されていない水を避け、ペットを触ったあとは、必ず手洗い・消毒をしましょう。