細菌性腹膜炎は、腹膜というおなかの中にある膜に、細菌が感染しておこる、非常に重たい病気です。

 

腹膜とは何?腹膜の構造とそこに起こる腹膜炎とは

腹膜とは腹腔というヒトのお腹の中を包んでいる膜状の臓器の事で、面積にして約1.7平方メートルもあります。腹腔内には胃、小腸から大腸の消化管や、肝臓胆嚢、膵臓などの臓器があります。また女性では子宮や卵巣も腹腔内の骨盤内に存在します。

 

ちなみに、腹腔に対して胸腔というスペースには心臓、肺、食道などの臓器が存在します。

 

そして腹膜炎とは、通常無菌状態である腹腔内に何らかの機転によって炎症が生じ、波及した状態を言います。短期間のうちに臨床症状が出現し、進行しやすい疾患です。

 

時には敗血症といって体内に細菌が充満してしまい、播種性血管内血液凝固症候群という体中の血管に血栓が多発と同時に血液が凝固しなくなる状態に落ち入り多臓器不全になって死に至る危険性も高い疾患です。

 

腹膜炎が発症する原因は大きく分けて3つあります。

 

①ひとつは細菌性腹膜炎といい、通常無菌状態の腹腔内に例えば消化管穿孔などの疾患があり細菌がばらまかれて腹膜炎が発生します。

②次に化学性腹膜炎というのがあります。これは例えば、肝臓で生成され、胆嚢にたまっている胆汁などが腹腔内で炎症を惹起する原因となります。

③最後は、本来腸管から腹腔内には内溶液は漏れ出ないようになっているのですが、腸管に炎症が起こると腸壁の透過性が亢進して、腸内の細菌が腹腔内に浸透し腹膜炎が発生することもあります。

 

 

また、特殊なタイプとしては医原性の腹膜炎があります。内視鏡検査や、血管造影、内視鏡的食道静脈瘤硬化療法、肝動脈塞栓術などの医療検査や処置で腹膜炎が合併してしまう事もあります。

 

 

発生原因で分類されるのと別に、起こる場所によっても名称が変わります。

 

炎症の範囲が広く、腹膜全体に炎症が波及している場合は汎発性腹膜炎といいます。

 

また、腹膜の一部に症状が限定されているものを限局性腹膜炎といいます。

 

 

腹膜炎の症状

腹膜炎は、原則的には腹痛で発症します。次に嘔気、嘔吐が起こります。発熱を合併する事も多いです。腹膜を刺激すると痛みが強くなるので呼吸が浅くなり、呼吸の回数が増えます。

 

もし汎発性腹膜炎のような重症の腹膜炎に発展していた場合は、腹壁全体が板のように堅くなり、筋性防御と呼ばれる触ると痛みのあまりおなかの筋肉がぎゅっとしまる症状が起こり、板状硬化と形容されるほどのお腹がカチカチの状態になるくらい激しい腹痛症状が起こります。

 

 

 腹膜炎の診断

上記のような症状で病院を受診すると、医師は腹膜炎も視野にいれ様々な検査をしていきます。まずは聴診や触診で身体所見を見た後に、採血を行い、腹部のレントゲン写真や腹部エコー、CT撮影を行います。

 

採血データでは白血球や、CRPといった生化学検査の項目の中で炎症反応の程度を示す値が高くなります。

 

また、各種画像検査で腹膜炎に特徴的な所見としては、腹膜に炎症が起こると通常腹腔内には存在しない腹水といった成分が腹腔内に貯留します。これをエコーやCT検査では容易に見つけることができます。

 

重症の汎発性腹膜炎の原因として代表的な疾患として消化管穿孔がありますが、これが起こっていた場合は、free airといって腹腔内に本来無いはずの空気の像がみられることがあります。消化管の中には食物の他に空気も流通しているので、消化管が穿孔し破れると、中の空気も腹腔内に漏れ出てしまいます。

 

これがレントゲンやCTではfree airという空気の固まりの像となって描出され、消化管穿孔に腹膜炎が併発した場合は前述のように致死的な細菌性腹膜炎から敗血症となる危険を伴いますので、早急な対応が必要になります。

 

 

腹膜炎の治療

すみやかに強力な抗生物質を大量投与します。

 

同時に補液を行い、体内の脱水状態を補正します。

 

まずは広い範囲をカバーする(殆どの細菌全般に効果がある)抗生剤を投与し、血液培養や腹水培養で原因菌が特定された時は、その起因菌をターゲットとして抗生物質を投与します。

 

原因により手術が行われます。

 

腹膜炎の経過

軽症の場合は抗生剤投与により一週間ほどの経過で炎症は改善します。

 

重症の場合は、程度にもよりますが1〜2週間、抗生剤と補液で治療し、可能な限り敗血症になることを食い止めていきます。