消化管穿孔とは、胃や小腸、大腸などの消化管が何らかの原因で破れ食物などの内容物が腹腔内(お腹の中)に漏出し、腹膜炎などの重篤な症状に発展する疾患をいいます。

 

消化管穿孔は消化器疾患の中でも最も重症かつ緊急性を有するもので、すばやく適切な処置をしなければ生命の危険を伴います。

 

穿孔が起こると、24時間以内にほぼ100%の確率で腹腔内に細菌感染を起こします。なぜならば本来、胃や小腸、大腸などの中を通過する食物は、医学的には『不潔』と定義されます。外界に無造作に置かれているものは、基本的には目に見えない雑菌が付着しているのが当然で、消化管はその不潔な食物が通過しても問題ないような構造になっています。ですので、原則的にヒトは口からモノが入っても大丈夫なのです。

 

しかし、消化管が破れてこの『不潔』な食物が『清潔』であるはずの腹腔内に漏れ出てしまうと、重篤な感染症が起こってしまいます。

 

消化管の中でも、もっとも穿孔しやすい部位は十二指腸で、穿孔の原因としてはその前段階の消化管潰瘍が悪化する事で消化管の壁構造が弱くなり、最終的に破れてしまい穿孔が起こります。

 

 

消化管穿孔の症状

突然の腹痛で発症し、放置しておくと血圧が低下しショック状態におちいることもあります。

 

そして前述のように腹膜炎というお腹の中に細菌感染が起こり、お腹が板のように堅くなったり(筋性防御といいます)、Blumberg徴候といってお腹を押さえて離した瞬間に激痛を感じる症状が起こります。

 

吐血などの出血症状はあまりないことが多いです。

 

こういった症状があれば救急で病院を受診する必要があります。

 

 

消化管穿孔の診断

上記のような症状で病院を受診すると、医師は消化管穿孔を疑い様々な検査をしていきます。まずは聴診や触診で身体所見を見た後に、腹部のレントゲン写真やCT撮影を行います。

 

代表的な所見は少し専門的になりますが、free airといってお腹の中に本来無いはずの空気の像がみられることがあります。これはなぜかというと、消化管の中には食物の他に空気も流通しているので(ゲップが出るのはこの消化管の中の空気が逆流しているのです)、消化管が穿孔し破れると、中の空気も腹腔内に漏れ出てしまいます。

 

これがレントゲンやCTではfree airという空気の固まりの像となって描出されます。

 

 

消化管穿孔の治療

おおまかに分けて、保存的治療か外科手術療法かに分かれます。

 

腹部症状が限局的で、発症12時間以内であり、全身状態が良い軽症の場合は保存的治療が選択されます。具体的には、鼻から胃、小腸へ管を通して、消化管の内容物を吸引し、消化管に刺激を与えず安静にさせます。同時に、穿孔部位からこれ以上の消化管内容物が腹腔内に漏れ出ないようにします。そして、胃酸分泌を抑制する薬物を投与し、抗生物質で感染を治療していきます。

 

逆に、腹部症状が重篤で、発症から時間が経過しており、全身状態も不良の場合は外科手術に踏み切ります。基本的には開腹手術でお腹を開けて、消化管から漏れ出た内容物を腹腔内から除去、洗浄し、消化管の穿孔部位を塞ぎます(穿孔部位単純閉鎖術といいます)。

 

この時、大網といって消化管の前に脂肪成分でできたカーテンのような臓器があるのですが、これを一部切除し、穿孔部位に付着させる(大網補填術といいます)事で効果的に穴を塞ぐ事も出来ます。

 

 

消化管穿孔の手術後の経過

穿孔の部位、重症度によりケースバイケースではありますが、一般的にはお腹の自発痛が改善すれば、3〜5日で食事を開始出来る事が多いです。この際、まずは流動食やおかゆといった消化に優しい食べ物から開始します。

 

そのまま経過を見て常食に変更し、問題が無ければ1〜2週間で退院となります。