食事をとり栄養を摂取するためには、消化と吸収が必要です。消化は食べ物が口の中に入ってきたときからスタートします。

 

口腔(こうくう)は唇の後ろに広がる空間です。ここで、口の中で食物の咀嚼(そしゃく)や唾液との混合など、消化の第一段階が行われ、次の消化管である咽頭へと送り込まれます。

 

咽頭についても軽く説明しておきます。咽頭は「食べ物」と「空気」の通る三叉路の交差点です。食物が通る道は消化器系であり、食道へつながっています。一方で、咽頭は空気が通る呼吸器系でもあり、気管へとつながっています。

 

つまり「食べ物」の通る道は口腔→咽頭→食道→胃・・・という流れで消化器系に属し、食物はこのルートを通ります。「空気」の通り道は口腔→咽頭→喉頭→気管・・・という流れは呼吸器系に属していて、空気はこのルートを通ります。

 

食べ物が通るときには、空気のほうの通り道を塞いで通らないようにします。この機能が落ちることが誤嚥といい、高齢の方がムセてしまうのはこの機能が落ちているためです。

 

さて、先ほど口腔の説明で消化の第一段階が行われると言いました。しかし普段私たちが何気なく行っている噛む行為が消化であると認識している人はどれくらいいらっしゃるのでしょうか?

 

ということで、ここからは消化器としての口腔に焦点を当てて説明していきたいと思います。

 

口の中の消化酵素

口腔での消化で主に仕事をしているのは「唾液中アミラーゼ」という消化酵素です。別名はプチアリンとも言います。この物質は食物の中でもデンプンをブドウ糖へと分解する働きをしています。

 

「アミラーゼ」は膵臓からも分泌されていて、口腔内にあるアミラーゼは唾液腺から分泌されているので「唾液中」という言葉をつけて区分していると言う訳です。

 

さて、ここまででもややこしいアミラーゼですが、実はさらに「α-アミラーゼ」というものと「β-アミラーゼ」などがあります。

 

一般の方はここまで理解しておく必要もないとは思いますが参考程度に、αとβでは少々デンプンの消化の仕方が異なっています。

 

α-アミラーゼはデンプンを適当に、小さくすることだけを目的に消化します。一方でβ-アミラーゼはマルトース単位という、ある一定の塊の状態にすることを目的に消化します。

 

例をだして説明します。デンプンは10個のブドウ糖からできている鎖状のものと仮定すれば(真珠のネックレスをイメージしてください)、α-アミラーゼは1個のブドウ糖にする場合もあれば、3個のブドウ糖が固まった状態にする場合もあります。一方で、β-アミラーゼは2個のブドウ糖が固まった状態を5個作ります。β-アミラーゼは規則的にデンプンの鎖を切るのです。

 

 

2通りのやり方で小さくされたデンプン(ブドウ糖)は、最終的には小腸から吸収され、臓器を動かすためのエネルギーとして使用されます。

 

また、アミラーゼにも活躍しやすい環境と言うものがあります。アミラーゼが働きやすいのは、

 

・体内にカルシウムイオンが多い場合

・pH:6.5

 

の2つの条件がそろったときです。なので、カルシウムが不足していると消化不良になったりデンプンを体が栄養素として利用しづらくなったりするので注意が必要です。

 

 

口の中にあるアミラーゼ以外の酵素の働き

ここまではアミラーゼの説明をしてきましたが、口腔内にある酵素はアミラーゼだけではありません。唾液中にはアミラーゼの他に様々な酵素が分泌されていますが、これらの役割は食物を分解することよりも、食物と一緒に口腔内に侵入してきたウイルスや細菌を分解することにあります。

 

 

唾液の分泌のしくみ

次に、唾液がどのような神経に支配されて分泌されているのか説明します。このことについては、交感神経と副交感神経がどのようなときに優位になるのか知っている必要がありますので、ご存知でない方はそちらの働きも同時に見てみてください。

 

 

唾液は交感神経優位でも副交感神経優位でも分泌が促進されます。これには理由があります。

 

唾液ってネバネバしているときとサラサラしているときがありますよね。これがヒントになっています。

 

詳しい説明は省きますが、交感神経が優位の時は基本的に体に危険が迫っているときと解釈してください。この時、体はネバネバした粘液性の唾液を分泌します。

 

これによって先ほど説明した、アミラーゼ以外の酵素が同時に多く分泌されていて、生体防御が行われます(交感神経は体を危険から守るために優位になります)。

 

一方で、副交感神経が優位の時は、体はリラックスしている状態です。体は安全なうちにエネルギーを溜めようとするため、消化・吸収が促進されます。この時に分泌される唾液はサラサラしています。これにはアミラーゼが多く含まれていたり、サラサラしていることで咽頭へと食べ物を送りやすくしたりします。

 

 

唾液の分泌はこの2つの神経によって支配されています。

 

口の中での消化は

・食べ物を細かくする(噛む)
・アミラーゼでデンプンを分解する
・そのほかの酵素で、異物がなるべく入らないようにする

という過程を行っています。