膵臓は食べ物の消化酵素を作るだけではなく、内分泌機能といって体の内部に働きかけて、体の状態を維持するための機能を持っています。

 

 

膵臓で作られる内分泌ホルモンの名前と作る細胞

膵臓の内分泌細胞は直径0.1mm程度の細胞群をなして島状に散在していて、その島はランゲルハンス島と呼ばれています。

 

ランゲルハンス島は索状にならぶ内分泌細胞と、その間を走る洞様毛細血管(毛細血管の中でもごく細い血管のことで、その壁には穴が開いていてホルモンが血中へと移行しやすいような構造になっている)からなっています。

 

ランゲルハンス島を構成する細胞は、A細胞、B細胞、D細胞とそれぞれ名付けられていて、それぞれが別々の機能を持っています。

 

A細胞はランゲルハンス島の細胞のうち約15%を占めていて、血糖値を上昇させる効果を持つグルカゴンというホルモンを放出します。

 

B細胞は約75%を占め、血糖値を低下させる効果があるインスリンというホルモンを放出します。

 

最後のD細胞は10%以下程度しか存在しませんが、グルカゴンやインスリンの分泌を抑制する効果があります。

 

なぜB細胞が最も多いのかというと、血糖値を下げるホルモンを分泌するのがB細胞しかないからではないか、と言われています。

 

血糖値はグルカゴンの他にも様々なホルモンの影響を受けて上昇することはありますが、血糖値を下げるホルモンはインスリン以外にありません。

 

こういったことが背景になっていると現在は考えられています。

 

 

「あれ、A、BときてなぜDなんだ?」となる方もいるかもしれません。実はランゲルハンス島にはもともとC細胞もあるとされていました。

 

しかし、C細胞はモルモットで見つかった細胞で、D細胞がヒトで発見された細胞でした。結局同じ細胞だったのですが、ヒトとモルモット、どちらで発見した方を優先するか考えた時に、ヒトで発見した方を優先することに決め、D細胞という名前になったのです。

 

ランゲルハンス、という名前は単に発見者の名前をつけただけで、ランゲルハンス島は膵臓全体で100万個以上あると言われています。

 

 

次に、実際にどのようにA、B、D細胞が働いているのか説明していきます。

 

まず、お腹がすいているときには、人はエネルギーを必要としています。ですが、食事によるエネルギー供給がない場合、ランゲルハンス島のA細胞がグルカゴンを血中に分泌します。

 

グルカゴンの働きによって、肝臓に溜められていた糖が分解され、血中に放出することで血糖値を一定値以下にしないように防衛します。放出された糖は脳などの、少しでも糖の供給が滞ると影響が出る臓器から優先的に使われます。

 

 

一方で、食事した後などの高血糖時には、B細胞が血管にインスリンを分泌し、肝臓、筋肉、脂肪組織などに糖が取り込まれます。

 

これらの特定の組織の細胞にはインスリンを感知すると開くゲートのようなものが存在しているので、「組織特異的」に糖をため込むことができる訳です(専門的に書くと、インスリンを感知した肝臓、筋肉、脂肪組織は細胞中に所持していたGLUT4を細胞膜表面に発現させ、それによってグルコースの取り込みを促進します)。

 

最後にソマトスタチンについても説明しておきます。ソマトスタチンは膵臓だけではなく視床下部(ししょうかぶ)からも分泌されるホルモンです。

 

このホルモンは必ず何かを抑制する働きを持っています。例えば膵臓のD細胞から分泌されるソマトスタチンはインスリンやグルカゴンの分泌を適宜抑制し、血糖値のバランスを保っています。

 

同様に視床下部から放出されるソマトスタチンも、成長ホルモンの分泌を抑制する働きがあります。さらに、消化管からの栄養の吸収を抑制する効果も持っています。

 

このように、膵臓の内分泌機能は人の血中の状態によって何が促進して何が抑制されるのかを識別して働く非常に賢い臓器なのです。