肝膿瘍とはどのような病気?

肝膿瘍とは肝臓の外から、細菌、真菌、原虫(アメーバ赤痢)などの肝膿瘍の発生の原因となるバイキンが、肝臓の組織の中へ侵入してきて、増殖し、肝臓の中に膿瘍という菌の入った膿の塊の「巣」を形成する疾患の総称です。

 

現在の日本の肝膿瘍の原因では、90%以上が細菌が原因の「細菌性肝膿瘍」が占めます。感染経路としては、経胆道性(胆汁の通り道)、経門脈性(腸から血液を集めるところ)、特発性(原因がわからない)、経動脈性、医源性などがあります。頻度としては経胆道性、経門脈性、特発性からの感染が多くなっています。

 

起炎菌として大腸菌、クレブジエラ属、腸球菌、緑膿菌などのグラム陰性桿菌に加えてバクテロイデスなどの嫌気性菌も認められ、40%以上が複数の菌による感染が原因となっています。

 

そして肝膿瘍は大きく2つに分類されます。

それが

・化膿性肝膿瘍
・アメーバ性肝膿瘍

の2つです。肝膿瘍は大きくこの2つに分かれます。

 

化膿性肝膿瘍は、起炎菌はグラム陰性桿菌の大腸菌が最多となっています。他の起炎菌としてはクレブジエラ、緑膿菌、スタヒロコッカス、嫌気性菌などです。

 

膿瘍は半分が単発性(膿の袋が1つ)で半分が多発性(たくさんできる)ですが、アメーバ性肝膿瘍と比べると多発性肝膿瘍の割合が多くなっています。

 

細菌性なので肝臓は腫大し、膿瘍は黄褐色で、すぐ下の横隔膜下膿瘍に発展し重症化しやすいという特徴があります。

 

アメーバ性肝膿瘍はアメーバ赤痢感染症にかかった後、数年経って発症します。アメーバ性肝膿瘍は単発性(膿の塊が一つ)のことが多く、膿瘍の色はチョコレート色になっています。

 

大腸から門脈を通して肝臓内に感染し、15〜20%ほどは胸膜や横隔膜を介して肺に広がり重症化する事もあります。ですので、化膿性肝膿瘍と比べて、胸痛や咳といった症状が現れたりします。

 

蛇足ですが、アメーバ性肝膿瘍は男性同性愛者に多く、医師は注意深く問診する必要があります。

 

 

肝膿瘍の症状

早期から出現する主要症状は、悪寒、戦慄、発熱などの炎症に起因した症状です。

 

くわえて、肝腫大、右季肋部痛や胆道感染を併発すると黄疸の症状も出ます。特に不明熱(医学用語で原因不明の発熱を指します)の診断の際には、肝膿瘍を念頭においておく必要があります。

 

 

肝膿瘍の検査、診断

38度以上の発熱、炎症反応の上昇、画像診断が重要になってきます。

 

血液検査では、白血球やCRPといった炎症を示す数値が上昇します。また肝胆道系酵素も上昇します。アメーバ性肝膿瘍であれば免疫学的検査で陽性率は90%以上と高値を示します。

 

画像診断では腹部エコー、CTスキャンが有用です。

 

腹部エコーでは、初期から腫瘤様の膿瘍像を描出出来ます。

 

CT画像では特に造影剤を用いた検査が有効で、膿瘍の辺縁が造影され肝膿瘍に特徴的な画像所見を示し、診断の一助となります。

 

ほか、起炎菌を特定するために直接膿を吸引することもあります。

 

 

肝膿瘍の治療

感染が重症化し、命に係わる状態である敗血症、細菌性ショック、DIC(disseminated intravascular coagulation:本来出血の部位のみで起こる血液凝固反応が全身の血管内で無秩序に起こり、多発性血栓症に加えて、血液凝固能が低下する状態)、多臓器不全に移行すると致命的になる可能性が高いため、診断後、直ちに治療を開始する必要があります。

 

治療の基本は薬物療法膿瘍ドレナージ(膿を排出する処置の事です)です。

 

薬物治療は抗生剤で治療していきますが、初めはいろいろな菌に広く効く、広域スペクトラムの抗菌薬を用いて、エコー、あるいはCTガイド下に膿を直接針を刺し、膿瘍を排出し、原因となる菌が特定出来ればそれに特化した抗生剤を集中的に投与していきます。

 

 

肝膿瘍の予後について

化膿性肝膿瘍の単発性のものは、抗生剤治療+膿瘍ドレナージ併用で問題なく治癒していきます。ただし、多発性肝膿瘍かつ患者が高齢者で体力、免疫力が低下していたりすると30〜50%という高い死亡率の報告もあります。

 

アメーバ性肝膿瘍は化膿性に比べて予後良好で、80〜90%は完治してしまいます。

 

ドレナージを頻回に必要とするような重症例では、排液の量、性状などを観察する必要があります。

 

肝膿瘍は感染症の中でも重症疾患に分類されますので、DIC、多臓器不全などの致死的な合併症に移行しないよう、全身状態のきめ細かな観察が重要になってきます。