食道静脈瘤とは、門脈という肝臓に流入する大きな静脈路の圧が200mmH2Oを超えるようになり、食道から肝臓への静脈が圧亢進することで、胃の上部や食道粘膜下層の血管が拡張・努張した状態の疾患を言います。

 

この状態になってしまうのは、お腹の中の血管が集まる門脈という血管が、肝臓に戻るときに障害が起こるためにおこります。なぜそれが起こるか?というと、肝硬変(アルコール性、ウイルス性など、あらゆる慢性肝疾患の最終状態まで進行した状態)で肝臓の組織が繊維に置き換わってしまって肝臓の正常な機能が保てなくなってしまうからです。

 

 

門脈亢進症の原因としては最も多いのは前述の肝硬変で85〜90%を占めます。他には原因不明の特発性門脈亢進症やBudd-Chiari症候群(バッドキアーリ症候群;肝静脈あるいは肝部下大静脈の閉塞により肝静脈圧、肝後性門脈圧亢進が起こる疾患)などがあります。

 

 

食道静脈瘤の症状

食道静脈瘤は静脈瘤が落ち着いている時は特にこれといって症状は無いですが、一旦その静脈瘤が破裂してしまうと大量出血を来し、失血死や出血性ショックに伴う肝不全によって死亡する危険を常に伴っています。

 

吐血はそれまでの自覚症状は無く新鮮血で、突然の吐血で発見されることも多いです。また、消化管に貯留した血液が発生源となって高アンモニア血症も起こります。

 

肝硬変がベースとなっていますので、肝硬変+門脈圧亢進が原因なる様々な症状も起こり、腹水貯留、黄疸、くも状血管腫(静脈圧が亢進することで体表の血管が浮き出る状態)、手掌紅斑、肝脾腫、低アルブミン血症などが起こります。

 

注意が必要なのは早期合併症として、腎不全、肺水腫、DIC(播種性血管内血液凝固症候群)などの致死的合併症を併発する事もありますので注意が必要です。

 

 

食道静脈瘤の検査、診断

診断は肝硬変をベースに持つ患者は、医師は常に食道静脈瘤の存在を意識しているので、内視鏡検査で容易に診断が出来ます。(もし普段のかかりつけ以外で内視鏡検査を受ける場合は、肝硬変がある旨を検査担当医にお伝えするとよいでしょう)

 

上部消化管内視鏡で食道の所見を観察すると、静脈の努張発赤の所見としてred color signといって連珠状の静脈の拡張が確認出来ます。

 

食道の内視鏡所見には一定の診断基準があり、静脈瘤の形態、色調、発赤所見、占拠部位を判断材料に治療方針を考察します。

 

食道静脈瘤は破裂の危険を未然に防ぐ事が重要ですので、これらの所見を総合して場合によっては後述しますが予、防的硬化療法などを行います。

 

 

食道静脈瘤の治療に関して

大きく分けて静脈瘤破裂前の予防的治療と破裂後の出血時の治療に分かれます。

 

まず、予防的治療ですが、内視鏡的硬化薬注入療法(EIS;endoscopic injection sclerotherapy)を用います。内視鏡下において食道静脈瘤内にエタノールアミンやその周囲にエトキシスクレロールといった塞栓剤を注入し、それによって引き起こされた炎症と随伴する肉芽形成で再出血の予防を計る方法です。

 

ただし、効果は一時的な場合が多く、繰り返し行う必要があります。また繰り返す事で食道潰瘍が発生する事もありますので注意を要します。

 

内視鏡的硬化薬注入療法の適応は、出血性静脈瘤や出血の既往のある静脈瘤、前述のred color signが陽性のものなどです。

 

 

もうひとつの予防的治療は、内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL;endoscopic variceal ligation)です。軟性のループを用いて、内視鏡下で静脈瘤を正常粘膜も含めて結紮し、消去してしまう方法です。

 

また、まれですがEISやEVLで止血困難なときは外科的手術を併用する事もあります。

 

そして、出血時の治療が重要です。

 

この場合、多くは緊急性を要し、生命に危険が及ぶリスクもありますので迅速な対応が必要です。

 

まずは、出血性ショックを未然に防ぐべく、静脈路から十分な補液、場合によっては輸血を行います。

 

そして内視鏡操作が可能な症例では、EISやEVLなどの低侵襲な処置で出血を止めにいきます。この時、出血が多量で内視鏡で十分な視野が確保出来ない場合は、Sengstaken-Blakemore tubeというチューブを鼻から食道まで挿入し、食道静脈瘤部分を圧迫する事で一時的な止血をはかり、その間に処置してしまうこともあります。

 

内視鏡操作が不可能な症例では外科手術に踏み切り、食道離断術や脾臓摘出術等を行います。

 

止血後は、きめ細かい全身管理が必要で、特に肝不全対策が重要です。

 

止血後、消化管内に貯留した血液は後に高アンモニア血症の発生源となるため、胃内吸引、胃洗浄、浣腸などを行います。