潰瘍性大腸炎は安倍首相の持病として有名になりましたが、原因不明の非特異性炎症性腸疾患です。

 

主に大腸粘膜を侵し、びらんや潰瘍を形成します。寛解と増悪を繰り返し、完全治癒を得られない疾患です。

 

男女比は1:1とほぼ同じくらいで、初発年齢は10〜60歳代と様々ですが、特に20〜30代に多くなってきてます。

 

もともと欧米で有病率の高い疾患ですが、近年は我が国でも有病率や発症率が上昇し、2004年の統計では患者数が8万人を超えています。特定疾患治療研究対象となっており、有病率は10万人対50前後で、毎年10%前後増加してます。

 

好発部位は左結腸で、小腸に病変が及ぶ事はほぼありません。

 

病理学的には、粘膜や粘膜下層を中心に非特異的炎症が起こり、上皮細胞の異常、T細胞、B細胞等のリンパ球の異常、単球、マクロファージ系統の異常が指摘されています。

 

病変部位による分類としては①全大腸炎、②左側大腸炎型、③直腸炎型、にわかれます。直腸のみに限局するタイプは数%で、病変が全大腸に及ぶタイプは約1/3と最多になっています。

 

 

潰瘍性大腸炎の症状

典型的症状は腹痛、血性下痢です。

 

軽症例では、下痢、粘血便、しぶり腹(便意を催すのに便が出ない、あるいは出ても少量)の症状を訴えます。

 

重症例になると、血性下痢、腹痛、発熱、体重減少、貧血などの全身症状が強くなってきます。

 

若年者において長期の粘血便を認め、ストレスによって症状が悪化する傾向があります。

 

潰瘍性大腸炎には、重症判定の6項目があります。

①1日6回以上の下痢
②血便
③37.5度以上の発熱
④脈拍90/分以上
⑤ヘモグロビン(血中の赤血球色素量)10g/dl以下
⑥赤沈(血中の炎症反応を示す値)30mm/hr以上

の6項目の4つ以上を伴った場合は重症と判定します。

 

そして潰瘍性大腸炎は全身の臓器に合併症を起こす事が特徴的です。

 

肝臓に対しては、脂肪肝、肝硬変、胆管周囲炎、原発性硬化性胆管炎を、膵臓に対しては膵炎を起こします。

皮膚病変の合併症は、壊疽性膿皮症、結節性紅斑といった炎症症状を起こします。

また、眼症状は強膜炎、虹彩毛様体炎、ぶどう膜炎を起こすことがあります。

関節に対しても、末梢関節炎、強直性脊椎炎を起こし、口腔内でも口腔アフタを合併します。さらに全身の血管に血栓性静脈炎を併発と様々な部位に合併症を起こすので非常に重篤な疾患と位置づけられています。

 

 

潰瘍性大腸炎の検査、診断

感染性大腸炎と症状が類似するので、診断には注意が必要です。

 

最も特徴的な所見は、直腸から口側にかけて連続性の炎症を示す事で、組織学的所見、および炎症の連続性を加味して診断を確定します。

 

血液検査では、白血球、CRPといった炎症反応の上昇、出血による貧血が起こります。また血便を合併しますので当然、便潜血反応は陽性になることが多いです。

 

消化管内視鏡検査では、直腸から連続した粘膜を中心とした非特異的炎症が見られ、粘膜下の血管が不透見になり、容易に出血し、一部浮腫状に見えます。

 

これら所見に加えて、免疫学的検査で抗大腸粘膜抗体陽性を認めます。

 

 

潰瘍性大腸炎の治療

罹患範囲、重症度、臨床経過を総合的に判断して治療方針を決定します。軽症例では内科的治療が中心になります。

 

サラゾピリンやペンタサといった抗炎症薬を内服し、症状によってはさらに追加でステロイド剤、TNFα阻害剤を投与していきます。

 

重症例では入院治療になることが多く、安静、補液、サラゾピリン、ペンタサ、ステロイド、TNFα阻害剤と集中的に治療していきます。

 

これらの治療を行っても症状の改善が見込めない時は外科的治療を選択します。

 

手術の絶対適応としては、大出血、消化管狭窄、穿孔や中毒性巨大結腸といって潰瘍性大腸炎の最重症例を認めた場合に行います。

 

術式は直腸粘膜除去を行う全大腸切除・回腸肛門吻合術や肛門管上の数cmの直腸粘膜が残存する回腸肛門管吻合術を行います。

 

いずれにしても完全治癒は見込むよりは、長期に継続的に治療していく事が必要になります。

 

発症後5年以内は再発を繰り返しますが合併症出現率は低く、発症後5年以後は再発の頻度は減るものの合併症の出現頻度が増大します。