急性膵炎とは、膵臓という、種々のタンパク質分解酵素を生成する臓器が、様々な要因で膵臓自身を自己融解し、血管透過性が亢進し、循環血漿量が減少、ショック状態に陥ってしまう重症疾患です。

 

病因はアルコールの多飲(35〜40%)、特発性(25%)、胆石症(20%)、他は副甲状腺機能亢進症や、高脂血症、ビタミンD過剰などの代謝栄養障害、膵臓損傷、腹部外傷、手術、循環障害、低酸素血症、有機リンなどの毒素、ステロイド等の薬剤性、感染など多岐にわたります。

 

我が国での急性膵炎罹患患者は推定2万人程度といわれています。

 

このうち60%が軽度、20%が中等度、20%が重症急性膵炎になり、近年重症の割合が増加してきています。

 

30〜50歳代に多く、男女比は2:1と男性に多い疾患となっています。

 

年間志望者数は約500人ほどであり、重症急性膵炎は生命に危険が及ぶ病気です。特に55歳以上になると膵炎は重症化しやすくなり、我が国での重症急性膵炎の最も頻度の高い要因はアルコール性となっています。

 

 

急性膵炎の症状

病態は、要因、病期、重症度により大きく異なり、時間とともに刻々変化していきます。

 

主症状は上腹痛で初発症状の95%を占めます。心窩部(胸とお腹の中心部)〜背部にかけて強い持続痛を訴え、前屈位(三角座りのような体勢)をとると腹痛が軽減される特徴があります。

 

他にも悪心、嘔吐、腹部緊満感などの消化器不定愁訴や発熱、頻脈、血圧低下等がありますが、アルコールや脂肪摂取でこれらの症状は増悪します。

 

さらに、重症化すると、テタニーという症状が現れます。これは膵臓組織の壊死で、遊離した脂肪とカルシウムが結合し、カルシウムが消費されるため低カルシウム血症を呈し、手足にしびれを生じる状態です。

 

また血流障害が起こることで、腸への循環不全が起こりイレウス(腸閉塞)を併発します。

 

さらに出血傾向が進行しますので、お臍周囲に皮膚に色素沈着がおこるカレン徴候や、腹腔内出血により左側腹部に色素沈着するグレイターナー徴候が有名です。

 

重症度が増してくると、呼吸障害や、場合によってはショック状態に陥ることも稀ではありません。

 

 

急性膵炎の検査、診断

血液検査では白血球やCRPなどの炎症反応を示す値が高くなり、血清アミラーゼという膵臓機能を示す値が異常値を示します。また、前述のとおりカルシウムが消費されるので、血中カルシウム濃度が低下します。

 

診断には腹部CT検査が最も有用で、特に重症化の迅速かつ、正確な診断には造影CTを用います。膵臓の実質部分が腫大し、不均一化します。

 

また、合併症であるイレウスや、肺水腫などの所見もCTで発見可能です。

 

 

急性膵炎の治療

発症してから数日は重症膵炎に移行する可能性があるので注意して観察する必要があります。

 

多くは軽症例ですので、保存的治療が原則ですが、重症例を見逃さないことが重要です。

 

内科的治療としては、まずは絶食、高カロリー輸液を行うことで膵臓の外分泌機能を抑制し、これ以上の膵臓の自己融解を防ぎます。

 

そして腹痛対策として場合によっては麻薬性鎮痛薬でコントロールしていきます。

 

次に、膵臓の庇護として蛋白融解酵素阻害薬を使用します。

 

さらに、アルコール、胆石症などの原因の除去を行い、二次感染予防として広域抗生剤を使用します。

 

膵臓の壊死、感染の程度によっては外科的治療も考慮します。胆道ドレナージ術を行い胆道の減圧処置を行うことで、膵臓への負担を軽減します。

 

約20%の割合で、慢性膵炎に移行するので慎重に経過をフォローアップする必要があります。

 

 

急性膵炎の予後

大部分は軽症、中等症で後遺症も無く予後は良好なのですが、重症化すると致死率が30%にものぼると報告されています。

 

重症化した時の早期死亡の原因としては、循環不全、腎不全、呼吸不全になっています。