食道破裂は、1724年にBoerhaaveが最初に報告した疾患であり、Boerhaave症候群とも呼ばれています。

 

食道破裂は、嘔気、嘔吐などにより、食道内圧の急激な上昇によって、正常食道全層が破裂する疾患です。一旦起こると致死率の高い疾患です。

 

我が国の症例を集計すると、嘔吐との強い因果関係があることがわかっており、実際に80%ほどの関連性を示しています。この中でも得に、飲酒に関連した嘔吐が最も多くなっています。その他は、排便時の力み、分娩時のいきみ、暴飲暴食などが挙げられます。

 

普通の嘔吐は、吐物が胃内から食道、口腔に逆流するので危険は無ないのですが、本症の場合には、食道が弛緩しなかったり、あるいは随伴した食道炎などのために、あらかじめ食道壁の抵抗力が弱まっているなどの器質的変化も考えられています。

 

発生頻度は圧倒的に男性に多く、我が国の集計例では年齢はまばらです。

 

破裂部位は胸部下部食道がほとんどを占めます。

 

 

食道破裂の症状

アルコール飲料を取り、過食した後に、激しい嘔吐とそれに引き続き心窩部(胸の中心部位のこと)痛、胸骨後部、胸痛などで発症することが多いです。

 

疼痛は肩、背部にまで放散することが多くなってます。吐物に血液が混じることもありますが、大出血を伴うことはあまりありません。

 

発症から時間の経過とともに、縦隔(胸腔内の食道の通る中心部分)の炎症、気胸、膿胸などのため、呼吸循環不全が増強し、ショック状態に陥ることもあります。

 

Barretという医師が本症の3主張を①呼吸困難、②腹壁の筋性防御(腹痛の程度が重症な場合、お腹の筋肉が堅くなること)、③皮下気腫と報告しています。

 

 

食道破裂の検査、診断

本症の診断は、食道破裂の存在が念頭にあるかどうかにかかっている場合が多いです。しかしながら病歴、症状ともに典型的なことが多いので、診断を下すことは困難ではありません。

 

しかし、実際には初発症状を見逃してしまい、膿胸の治療中などに胸腔内より食物が吸引されて診断がつく場合もあります。初診で正確に診断が着くのは30%程度といわれています。

 

この時に重要なのは鑑別診断で、膿胸、気胸、肺炎、心筋梗塞、狭心症、胃十二指腸穿孔、出血性胃潰瘍、急性膵炎等を念頭に診断していきます。

 

診断に重要なのはCT検査であり、本来無いはずのfree airと呼ばれる空気の像が、縦隔内にみられます。また、本症を疑って、ガストログラフィンなどの造影剤を用いて、食道造影を行い、食道から縦隔内または胸腔内に造影剤の漏出が認められれば、正しい診断が得られやすいです。

 

内視鏡検査は必須の検査ではないですが、食道破裂部の有無、形状、大きさなどの情報が得られるので治療方針決定に有用な場合があります。

 

 

食道破裂の治療

最も理想的な治療は、早期診断のうえで速やかに破裂部の直接縫合閉鎖術を行うことです。直接縫合にはゴールデンタイムという、発症から治療までの時間があり、約24時間以内であれば、術後感染等の合併症も少なく治療できると言われています。

 

しかし、確定診断までに時間がかかりすぎた場合は、胸腔ドレナージを行う必要があります。

 

胸腔ドレナージは食道破裂部位から漏れ出た吐物などを、清潔領域内である縦隔から排出する方法です。創傷の二次治癒を目指すものですが、その成功率はあまり高くなく、救命処置にとどまることもあります。

 

また、破裂の程度がそれほどでもなく全身状態も良好であれば、保存的に経過を見ることもあります。中心静脈から栄養を点滴で補いながら、消化管を安静にします。

 

食道破裂の予後について

治療成績は時代の推移とともに向上し、1975年以前であれば食道破裂の死亡率は48%ほどもあったのですが、近年では約15%にまで救命率は上昇しています。