腹部大動脈瘤とは

大動脈とは、心臓の左心室から出るメインの血管で、胸部で回旋し、下行したところで腹部に到達し、その部分を腹部大動脈といいます。腹部大動脈の壁が、脆弱化のため、動脈が限局的に拡張し、“こぶ”を作成するのですが、それを腹部大動脈瘤といいます。

 

最終的には破裂して致死的になる非常に重篤な疾患です。大動脈瘤は大きく分けて胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤に分類され、年間死亡数は約5000人と言われています。

 

腹部大動脈瘤は、動脈瘤の中でも最も知られた疾患であり、外科治療の歴史も古くからあります。

 

原因は90%が動脈硬化症によるものです。腎動脈より下の腹部大動脈が多くなっています。他の原因としては、大動脈炎症候群という炎症性疾患で20〜30代の女性に多くなっています。

 

感染症によるものもあり、近年では少ないですが梅毒から発症することもあります。

 

また、特殊なパターンですが、マルファン症候群という遺伝性の結合組織病により、合併症として大動脈瘤が発生することもあります。

 

 

腹部大動脈瘤の症状

腹部大動脈瘤は、通常無症状に経過し、次第に増大して、数週間から数時間の前駆症状を伴い破裂に至ります。

 

近年では破裂前の診断技術の進歩によって比較的、早期に動脈瘤が見つかるので、より無症状症例が多くなっています。

 

破裂前の症状としては、腹部動脈瘤が存在することで、下肢の動脈閉塞症状から虚血におちいったり、圧迫症状として腹痛や、腰痛、腸閉塞がおこることもあります。

 

また、腹部の拍動性腫瘤を触知したりします。

 

ただし、動脈瘤が存在するだけでは、明確な症状が無いことも多く、何か他の理由で病院を受診した際に、X線やCT検査で気付くこともあります。

 

突然の急激な腹痛が起こった場合は存在していた動脈瘤破裂の危険もあり、急激な出血性ショックから死に至る可能性も高くなります。

 

破裂の頻度は動脈瘤の大きさとの関連性が高いと言われています。

 

4cm以下では10%、5cm以下では18%。7cm以上になると51%ほど破裂の確率が上昇すると報告されています。

 

 

腹部大動脈瘤の検査、診断

一旦破裂してしまうと致死率が高い疾患である為、可能な限り未破裂の状態で診断をつけておくことが望ましいです。

 

腹部大動脈瘤の存在は、腹部触診によって容易に診断可能ですが、動脈瘤が小さかったり、患者が肥満体型であったりすると、見逃されてしまうことも少なくありません。

 

診断は腹部エコーが簡易で確実です。さらに腹部CT、MRI、大動脈造影などを用いるとより確実に診断可能であり、特に造影CT検査は有用で、本来直線的な腹部大動脈に瘤を認めます。

 

臨床検査とベッドサイドエコーなどの検査で腹部動脈瘤が疑われ、症状が安定している場合はCT検査を行います。

 

 

腹部大動脈瘤の治療

治療は手術以外には根本的な治療は無く、腹部大動脈瘤が5cmを超えると破裂のリスクが高まると言われています。

 

手術適応になる大きさ以下のものは血圧のコントロール等、内科的管理をしていきますが、内科的治療のみでは根本的に破裂を防止することはできません。

 

そのため、破裂例や急激に大きさが増大しているものは手術適応となります。

 

術式は人工血管置換術で、腹部の動脈瘤がある部分を人工血管に置き換えます。近年の人工血管は材質にすぐれ、コラーゲン、アルブミン、ゼラチンで加工されているので、瘤化、感染がない限りは一生交換する必要はありません。

 

腹部大動脈瘤は破裂しなければ無症状のことも多く、大手術になる為、特に高齢患者の手術拒否例も多くあります。しかし、いつ破裂するかわからない動脈瘤があり、いつも不安を抱えている患者のためには、高血圧などの基礎疾患を治療しつつ、十分な説明を行いながら手術を勧めていく必要があります。