吸収不良症候群とは食べたものの栄養素(とくに脂肪)の消化・吸収、または輸送が障害され、食べたものを同化することができない状態が長く続くことによって、低栄養状態を起こす疾患です。

 

消化不良は多量栄養素(脂肪、タンパク質、炭水化物など)または微量栄養素(ビタミン、ミネラルなど)に影響を及ぼして、結果として糞便中への過剰排泄や栄養欠乏、消化管症状がおきます。

 

このような病態を示す疾患は吸収不良症候群の中でもさらに区分がされています。

 

栄養素の吸収過程そのものに異常がある場合は原発性吸収不良症候群(原発性とは疾患が起こる部位に何か原因があってその疾患が起きていることを指します)や、他に原因となる病気があったために起こる続発性吸収不良症候群に分けられています。

 

日本における吸収不良症候群は主に続発性吸収不良症候群です。

 

消化及び吸収不良は次の3段階のうちのいずれかのところで起きます。

 

①消化管腔内での酵素による脂肪・タンパク質・炭水化物の加水分解(この段階で胆汁酸塩は脂肪の可溶化を促進して、吸収がスムーズに行えるようにします)

②刷子縁(細胞の表面にある構造)酵素による消化及び最終産物の取り込み

③吸収した栄養素をリンパ管に乗せて輸送する

 

この三段階のうちで、どの部位が障害されても吸収不良が起きます。

 

 

原発性吸収不良症候群の原因となる疾患は、スプルー、腸酵素欠乏症などが挙げられます。

 

スプルーと腸酵素欠乏症

スプルーはグルテンが過敏なために起こる下痢、損耗(そんもう)などを主訴とするグルテン過敏性腸炎(セリアック病)と、熱帯や亜熱帯地方に見られる慢性で下痢や貧血を発症する無熱性の熱帯性スプルーの2種類があります。

 

グルテン過敏性腸炎は主に遺伝的素因の関与が予想されています。熱帯性スプルーは感染症に起因していると考えられています。いずれのスプルーも欧米に多くみられ、日本での発症例は極めてまれな疾患です。

 

一方で、腸酵素欠乏症はラクターゼなどの乳糖分解酵素が欠乏する疾患で、主に遺伝的に発生すると言われています。

 

 

続発性吸収不良症候群とは

日本人の場合、続発性吸収不良症候群が殆どです。

 

続発性吸収不良症候群は、クローン病が良く例に挙げられるような、広範囲にわたる腸の病変やアミロイド―シス(アミロイド―シスとは、アミロイドと呼ばれる本来体内には存在しないタンパクが体にできて、臓器にくっついてしまうことで機能障害を起こす病です)などの全身性の病気、放射線照射のあと、膵がんや短動眼などで消化酵素分泌障害などの疾患が原因となる場合が多いです。

 

 

吸収不良症候群の症状(下痢・脂肪便・栄養素の不足による症状)

吸収不良症候群の主な症状は、下痢、脂肪便、体重減少、浮腫、貧血、出血傾向、皮疹(皮膚症状)などが認められます。

 

初期に脂肪便や下痢といった症状が現れるのは、吸収不良症候群で真っ先に障害を受けるのが脂肪の吸収なのでこういった症状が主訴になります。長期間吸収が悪い状態が続くと、栄養が不足していろいろな症状が出てきます。

 

また、ラクターゼ欠損症に付随した場合は腹痛、腹部膨満感、水溶性下痢などの症状を呈します。

 

 

吸収不良症候群の治療方法

次に治療方法です。

(1) identification and treatment of the underlying disease

(2) treatment of the diarrhea that often accompanies these disorders

(3) identification and correction of nutritional deficits

 

が原則となります。つまり、まず原因を突き止めること。そして下痢のコントロール、そして、原因により栄養で改善できる方法があるかを見ます。

 

症状がまだ軽い場合に患者さんが受診してきた場合は、食事療法と消化酵素を補填してあげることで症状の快方を見込みます。食事療法は、低脂肪、高蛋白質、低線維食を勧めます。

 

症状が比較的重く、消化分泌障害がひどく認められる場合は低栄養状態を伴う場合が非常に多いので、必要であれば成分を合わせた経腸栄養法を実施します。

 

経腸栄養法とは、もうすでに消化されつつあるものを人工で作り、それを経鼻もしくは経口投与します。また、吸収不良症候群の治療に当たるだけではなく、その裏に隠れている疾患も見抜き、治療することが重要になってきます。