腎盂腎炎とは(尿路感染症について)

腎・尿路感染症とは、腎臓、尿管、膀胱、尿道と一連の関連臓器に起こる感染症の総称です。発症部位で大きく2つに大別され、腎臓、尿管の感染を上部尿路感染症といい、膀胱、尿道の感染を下部尿路感染症と言います。

 

その中でも、腎髄質、腎盂という腎臓の臓器実質内部にまで感染の炎症が波及した病態を腎盂腎炎といいます。

 

感染経路は上行性感染といって、膀胱炎に続いて起こることが多いです。多くは片側性で発症します。↓の絵でいうと、下から上に上がってきます。

 

起因菌としては膀胱炎と同様に、大腸菌が最多で、他にはプロテウス属、クレブシエラ属、稀に腸球菌などです。

 

腎盂腎炎を来しやすい因子としては、尿の流れが悪くなるような尿路通過障害となる腎尿路結石、腫瘍、膀胱尿管逆流症、前立腺肥大、神経因性膀胱などがあります。

 

女性の場合は、尿道が短く膀胱炎になりやすいので、ちょっとした体調の変化で腎盂腎炎になることがあります。

 

また、長期尿道カテーテル留置や、妊娠で子宮腫大による尿管の圧迫、痛風や糖尿病などで易感染性(感染症にかかりやすい状態)になる場合、ステロイド製剤や免疫抑制薬による薬剤性があります。

 

急性と慢性に分かれるのですが、急性腎盂腎炎は学童期〜壮年期に起こり女性に多くなっています。

 

特に乳幼児の尿路感染症は、小児科領域では日常診療で最も良く遭遇する疾患のひとつです。

 

正確な尿排泄症状は訴えることができないため、発熱を主訴として小児科を受診するとすでに重症化していることがあり注意が必要です。

 

また、小児の90%の症例が膀胱尿管逆流現象(VUR)を有しています。尿路奇形を有していることも多く、小児の高血圧の原因として頻度が高いです。

 

二次性高血圧により、末期では腎血管および腎臓の糸球体という微細な組織レベルでの障害が起きることもあります。

 

 

慢性腎盂腎炎は小児では少なくなっています。

 

 

腎盂腎炎の症状

急性腎盂腎炎では、高熱、悪寒、膀胱炎症状を認めます。

 

また、CVA叩打痛といって背中を叩くと、腎臓周囲に痛みを認めます。

 

慢性腎盂腎炎では、一般的に自覚症状は少なく、食欲不振、全身倦怠感、高血圧を認め、尿濃縮障害や尿の酸性化低下などの症状を認めます。

 

 

腎盂腎炎の検査、診断

血液検査では炎症反応である白血球やCRPなどの項目が高値を示します。

 

また、尿検査では尿中の細菌数が増加し、培養検査で起因菌が検出されます。前述のように大腸菌が最多となっています。また、尿沈査を蛍光抗体法で、抗体と結合した細菌を検出するACB法という検査も行います。

 

そしてFairley法という膀胱洗浄後の尿中細菌数の推移から感染部位を決定する方法もあります。これは、膀胱感染を除外することで、上部尿路感染症の証明になります。

 

IVP(静脈性腎盂造影検査)を行うことで、初期には変化が見られませんが、慢性化すると腎盂の鈍円化がみられて診断の一助になります。

 

前述のように小児の腎盂腎炎では尿路奇形を合併している可能性があるため、初回発症時も、侵襲の少ない超音波エコー検査を行い、2度、3度と繰り返す時はIVP(静脈性腎盂造影検査)や、場合によってはVCUC(排尿時膀胱尿道造影)などの精査を行う必要があります。

 

 

腎盂腎炎の治療に関して

治療は主に抗生剤加療になります。感受性があり、腎移行のよい薬剤を使用します。

 

ペニシリン系、セフェム系、ニューキノロン系といった抗菌薬を使用します。抗菌薬の使用時には、腎機能を定期的に観察し、腎臓の機能障害が出た場合は投与量を減量する必要があります。

 

同時に尿路通過障害が無ければ水分摂取による排尿促進を促します。

 

日常診療では、発症要因として重要な冷え、過度の排尿自制を避けるように指導することも重要です。

 

また、基礎疾患が背景にあり在宅医療で導尿などの経尿道操作を行う患者さんは、腎盂腎炎の発生には十分注意して観察する必要があります。