卵巣腫瘍茎捻転ーまず卵巣と卵巣腫瘍について解説します。

卵巣はアーモンド程度の大きさの臓器ですが、様々の成分から構成されています。卵巣は皮質や髄質に分けられますが、皮質には卵細胞が散在し、その周囲に卵細胞を助ける性索間質というものが存在します。

 

卵巣腫瘍は文字通り、卵巣に生じる腫瘍ですが、この全ての構成成分を母地として発生します。

 

このために卵巣腫瘍には様々な種類が存在することになり、複雑な分類作業が必要になります。そこを細かく覚える必要は必ずしもありませんが、大きく分けて、タイプ別に表層上皮性・間質性腫瘍、性索間質性腫瘍、胚細胞腫瘍などがあります。

 

その中で卵巣腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍、いわゆる癌とに分かれます。

 

では、卵巣腫瘍茎捻転とはどのような病気か?

ここで、卵巣腫瘍茎捻転についての説明に戻りますと、卵巣腫瘍茎捻転では、卵巣がまず腫瘍を形成し、ある一定のサイズまで大きくなると、卵管と子宮をつなぐ卵管および卵巣固有靭帯や、卵巣動静脈を包括する卵巣堤索を茎として捻れが生じてしまい、腫瘍内部にうっ血や出血を生じ、急激な腹痛や腹腔内出血を起こす病気です。

 

主に良性の卵巣腫瘍が卵巣腫瘍茎捻転を起こします

 

腫瘍のタイプによって卵巣腫瘍茎捻転を起こしやすいものがありますが、代表的な卵巣腫瘍は胚細胞腫瘍である成熟嚢胞奇形腫、表層上皮性・間質性腫瘍である漿液性嚢胞腺腫、粘液性嚢胞腺腫、性索間質性腫瘍である繊維種などがあります。

 

この中でも成熟嚢胞奇形腫は卵巣腫瘍茎捻転を最も起こしやすい卵巣腫瘍になります。

 

成熟嚢胞奇形腫は20〜30歳代に好発し胚細胞腫瘍の大部分を占めます。

 

腫瘍は強靭な嚢胞(カプセル)で覆われ、このカプセルは毛、脂肪成分、歯牙などの皮膚様組織で形成されています。

 

これは胚細胞という将来、体の様々な組織に分化する細胞の中で皮膚に発展するはずの細胞が、卵巣の中で迷入してしまい腫瘍を形成します。

 

基本的には良性の腫瘍なのですが1〜2%の確率で悪性転化すると報告されており、特に高齢者で成熟嚢胞奇形腫を有している患者に対しては慎重な経過観察が必要です。

 

成熟嚢胞奇形腫なろの良性腫瘍がが卵巣腫瘍茎捻転を起こしやすい一番の原因は、悪性腫瘍と違い癒着(周囲の組織に炎症を起こしくっつくこと)を起こすことが少なく、腹腔内で比較的に自由に動きまわるの、そのため捻転を起こしやすいからです。

 

 

卵巣腫瘍茎捻転の症状

卵巣腫瘍茎捻転が起こると、市販の鎮痛薬では全く効果を認めないほどの下腹部痛を訴えます。いわゆる急性腹症として救急車で駆けつけるケースも稀ではありません。

 

腫瘍が破裂していた場合は、化学性腹膜炎といって成熟嚢胞奇形腫内の脂肪成分等が腹腔内にばらまかれ、筋性防御(炎症の波及によりお腹の筋肉が板のように堅くなること)や反跳痛(手でお腹を押さえて離すと痛みがお腹全体に響く症状)といった重症腹痛疾患の症状を訴えます。

 

 

卵巣腫瘍茎捻転の検査、診断

まずは身体所見で、腹痛の程度を触診で判断します。

 

さらに腹部超音波検査や経膣超音波検査で卵巣の腫大を認め、卵巣腫瘍を確認します。茎捻転を起こしやすいサイズはだいたい直径で10cm〜15cm程度と言われています。

 

さらに腹部CTやMRIでは明確な卵巣腫瘍を確認できます。CTやX腺では成熟嚢胞奇形腫の中の歯牙成分が白く石灰化病変として確認することができます。

 

また、MRI画像では、成熟嚢胞奇形腫の脂肪抑制という条件でみると腫瘍の脂肪部分が黒く抜け出ている像が描出されます。

 

 

卵巣腫瘍茎捻転の治療に関して

茎捻転で急性腹症を起こし、救急車で担ぎ込まれたケースでは緊急手術が行われます。それ以外のケースでは、なるべく早い時期に手術を行うように勧めます。

 

強靭なカプセルで覆われた本症では正常卵巣との境界が明瞭であり、卵巣を温存する卵巣腫瘍核出術を選択出来ます。特に若年者の場合、可能な限り両側卵巣の温存が好ましいためです。ただし、仮に片側卵巣が摘出されたとしても、1側(もう片方)が残存していれば女性ホルモンの生成も正常ですし、妊娠も問題はありません。

 

妊孕性(妊娠の可能性)温存の必要が無い中高年では患側附属器の摘出で卵巣ごと摘出してしまいます。

 

術後の経過は良好であることが多く、約1週間で退院可能です。