卵巣出血とは、女性は通常、月経から2週間前後で排卵といって卵巣の中から卵子が放出されるのですが、その排卵の際に卵巣内の細かい血管を損傷したり、出血性黄体嚢胞から持続的な出血を伴う病期です。

 

チョコレート嚢腫という子宮内膜症を背景とした卵巣腫瘍を持っている患者は、その腫瘍が破れて卵巣出血を起こすこともあります。

 

また、なんらかの基礎疾患を有しており血液抗凝固剤を内服している患者は卵巣出血を起こしやすいので注意が必要です。

 

いわゆる性成熟期の女性はすべからく卵巣出血を起こす危険があり、女性の下腹部痛の鑑別疾患のひとつとなっています。

 

多くは片側性で、右側発症が多いと言われています。これはS状結腸というS字状にカーブした大腸が卵巣出血を起こしたとしても、壁として機能し自然に圧迫止血してしまうからだと言われています。

 

 

卵巣出血の症状

初めは軽い下腹部痛を訴えますが、出血の量が多くなってくると腹腔内全体に出血が広がり、背部にまで痛みが波及することがあります。

 

これは増大した出血が、背部の後腹膜を刺激するからで、座ると下腹部に限局する痛みが寝ると背中に広がるといった特徴があります。

 

性器出血は必ずしも起こるわけではないです。

 

出血が多くなるとそれにより貧血が進行し、嘔気や、立ちくらみ、低血圧等のショック症状を認めることもあります。

 

 

卵巣出血の検査、診断

診察所見では、下腹部に圧痛(腹部を抑えるとその部分の痛みが増強する)や反跳痛を認めます。卵巣出血は片側性に起こることがほとんどですので、出血の起こっている卵巣側に圧痛を認めます。

 

緊急で受診する場合が多いので、まずは経膣超音波検査で子宮及び附属器(卵巣卵管)周囲を観察します。

 

卵巣出血が起こっている場合は、超音波では、出血している卵巣付近に黒く抜けるエコー像がみられ、出血量が多いとダグラス窩(子宮と直腸の間のスペース)や、膀胱子宮窩(膀胱と子宮の間のスペース)にまで出血が波及していることがあります。

 

出血からある程度時間が立っていると、通称“コアグラ”とよばれる血液が固まりかけてできる血餅が認められます。

 

下腹部痛を主訴に受診すると初診は内科医あるいは外科医、救急医、研修医が担当することが多いので経膣超音波ではなく腹部CTを撮影されることが多いです。腹部CTでも同様に出血した卵巣付近に出血像を認めます。

 

この時、産婦人科を受診したときは妊娠関連の疾患から問診するのと、検査の一番が超音波(放射線被爆しない)から検査するので問題ないですが、初診時が内科医や外科医であった場合は必ず妊娠の有無をチェックする必要があります。

 

妊娠していれば子宮外妊娠などの鑑別も必要ですし、何よりCT検査やX線を利用した画像検査をしてよいかの判断をしなければいかないからです。

 

 

卵巣出血の治療に関して

出血量も少なく、症状も軽い場合は入院し、補液や止血剤等の内科的治療で軽快してしまう場合が多いです。だいたい1週間前後で出血は止まり、腹腔内で出血は吸収されてしまいます。

 

診察時に既に多量の出血を来していたり、出血性ショックになるほどの出血量を伴う重症卵巣出血では、場合によっては輸血も行います。

 

持続的に出血が続き貧血が進行するような症例では外科手術療法を選択します。開腹術、あるいは腹腔鏡手術で、直接出血している卵巣の一部を切除し(卵巣部文切除術)、縫合止血することで治療します。

 

多くの場合片側性で、卵巣ごと摘出する必要はありませんので治療後の妊娠やホルモン動態への影響はありません。

 

手術を行った場合でも、比較的予後は良好で1週間〜10日前後で退院可能になります。

 

卵巣出血は早期に発見して的確に治療すれば問題の無い疾患ですが、出血が多量になれば出血性ショックから生命に危険を及ぼす可能性もあります。

 

一度卵巣出血を起こした患者は繰り返す可能性も考慮される為、排卵を抑制するピルを定期投与することもあります。

 

同じ症状が起こった場合は早めに婦人科を受診するように指導します。