甲状腺機能低下症とは、原因のいかんにかかわらず、甲状腺からのホルモン分泌が減少して、甲状腺ホルモンの作用が不足することにより種々の症状を呈する状態です。

 

甲状腺機能低下症は様々な基礎疾患を背景に起こるのですが、慢性甲状腺炎(橋本病)が最も多い原因です。。

 

甲状腺機能低下を起こす病態はたくさんあります。

 

橋本病を代表として、

抗甲状腺薬
ヨード
薬剤性(リチウムなど)
シーハン症候群
下垂体病変(下垂体腺腫など)
視床下部性(頭蓋咽頭腫など)
亜急性甲状腺炎
出産後一過性甲状腺機能異常症

など、さまざまです。

 

ヨードを沢山取ると、ヨードからホルモンを作るステップにブレーキがかかって、甲状腺機能低下症が起こることがあります。

 

甲状腺機能低下症の最大の原因は橋本病です。橋本病は甲状腺の慢性炎症であり、血中に甲状腺自己抗体が証明され、臓器特異的自己免疫疾患の代表疾患です。

 

成人女性の30人の1人の割合で存在し、それほどまれな疾患ではないので日常診療でよく遭遇する疾患のひとつです。

 

ただし、この中の半数以上は無症状で経過し、人間ドッグや検診での肝機能異常、高コレステロール血症が発見契機となることが多いです。

 

 

甲状腺機能低下症の症状

甲状腺ホルモンの低下は全身に様々な症状を起こします。

 

消化器症状としては、便秘や食欲低下を示します。このため、長引く便秘が主訴の女性の場合は、甲状腺機能低下がないか調べることは有用です。

 

では、他の症状はどうでしょうか。これも、いろいろな場所にいろいろな症状が出てきます。

 

全身症状としては、全身倦怠感、易疲労感、体重増加、低体温、嗄声(声帯の機能障害で声が枯れること)、悪寒などがあります。

 

循環器症状としては、重症の場合には心肥大や心のう液(心臓をくるむ心膜と心筋との間のスペースにある潤滑液のことです)の貯留により心機能障害がおこり、心音の減弱、徐脈、低血圧、息切れ等を起こします。

 

神経筋症状としては、こむらがえり、筋力低下、筋肉痛を呈します。

 

皮膚症状としては、四肢、顔面の粘液水腫、発汗減少、皮膚乾燥、頭髪脱毛、眉毛外側の脱毛、皮膚の黄染などを示します。

 

また、精神症状として、記銘力低下、計算力低下、言語緩慢、活動性低下が起こります。

 

性腺症状も起こり、月経不全や過多月経、無月経を呈します。

 

 

甲状腺機能低下症の検査、診断

甲状腺機能低下症は一般臨床においては見逃されやすい病態のひとつです。

 

主訴によって、消化器疾患、精神神経関連疾患、循環器疾患などにしばしば誤診されることがありますので、注意が必要です。

 

ですので、原因不明の便秘、低血圧、徐脈、低体温、便秘、月経過多、心拡大などを診たら、甲状腺機能低下症の可能性を考えます。

 

診断は特徴的な臨床所見とともに血液検査で甲状腺ホルモンの低下と、甲状腺ホルモン刺激ホルモンの上昇が起こります。

 

この二つのホルモンの組み合わせで、甲状腺機能低下症の基礎疾患の鑑別を行っていきます。

 

特に橋本病の場合は、抗甲状腺抗体(抗サイログロブリン抗体、抗ミクロゾーム抗体)が陽性になります。

 

甲状腺刺激ホルモンも甲状腺ホルモンも低い場合には、視床下部や下垂体の精査が必要です。

 

甲状腺機能低下症の治療に関して

基本的には内科的治療が中心で、甲状腺ホルモン薬の投与を行っていきます。少量から開始し、徐々に増加して維持量に変更していきます。

 

橋本病の場合、甲状腺機能低下症はほぼ永続的で、一度甲状腺ホルモンの投与を開始すると、一生続ける必要があるとされていましたが、一部の症例では甲状腺ホルモンの投与量を減量出来たり中止できたりすることもあります。

 

単純な甲状腺機能低下症ではなく、下垂体−副腎皮質系の機能低下がある場合は、甲状腺ホルモンの補充により逆に急性副腎不全に陥る危険があるので、副腎機能低下に対する治療から開始します。