便潜血検査は、現在、大腸癌集団検診や人間ドッグなどで幅広く行われている検査で、血便を来した時や、消化管からの出血を疑った時に行う検査のひとつです。

 

方法が簡易かつ侵襲(患者さんへの負担)が少ない検査ですので、スクリーニング検査(たくさんの人にする検査)としてはとても優れた手法のひとつです。

 

血便を来す疾患では黒色便であれば、上部消化管出血(胃、十二指腸〜小腸)、鮮血便であれば下部消化管出血(大腸、直腸)の場合が多くなります。

 

以下に示すように、一概に便潜血陽性といっても上部から下部まで核部位での病変が考慮されます。

 

上部消化管からの出血

・食道

食道静脈瘤、食道潰瘍および食道炎、マロリーワイス症候群、食道癌

・胃

胃潰瘍、急性胃粘膜病変、胃癌、胃肉腫

・十二指腸

十二指腸潰瘍、十二指腸炎

・小腸

上腸間膜動静脈閉塞、メッケル憩室、特発性小腸潰瘍、クローン病、肉腫

 

下部消化管からの出血

・大腸

大腸癌、大腸ポリープ、肉腫、潰瘍性大腸炎、クローン病、憩室炎、薬剤性大腸炎

・肛門

内痔核、外痔核、痔瘻

 

 

便潜血検査の方法

便潜血検査は、従来、化学的方法という手法で行われてきました。それは血液中のヘモグロビンという物質や、その誘導体であるペルオキシダーゼ反応を応用したものです。

 

ペルオキシダーゼ作用を有する物質が、過酸化水素下でグアヤック、ベンチジン、オルトトリジンといった物質と反応し発色させることでヘモグロビンを検出し、便中の血液の混入を証明する方法です。

 

これらの方法では、グアヤック法はあまり鋭敏ではなく、食物や薬物などの影響が少ないので、陽性であれば病的便潜血陽性とみなすことができます(偽陽性の少ない反応です)

 

しかし、オルトリジン法では鋭敏過ぎ、反応が陰性の時に潜出血は少ないものの、偽陽性率が高くなってしまうという欠点があります。

 

いずれの方法でもペルオキシダーゼ反応がヒトヘモグロビン以外でも陽性になることもあるため、食事制限を行う必要があり、感度を十分に高くできなかったという欠点がありました。

 

このため、ヒトヘモグロビンを特異的に検出する目的で、免疫学的便潜血反応が開発されました。

 

1974年にはじめてヒト血液を特異的に検出できることがわかり、我が国では1984年に免疫学的便潜血反応を用いられるようになってきました。

 

以下に、それぞれの検出法について詳しく説明していきます。

 

化学的便潜血反応

・グアヤック法

少量の糞便を試験管に取り、水と氷酢酸で混和し、グアヤックアルコールと過酸化水素水を加えて青色に発色させる方法です。

 

我が国ではヘモカルトⅡスライド法やシオノギB法というより簡易な方法で行われています。

 

感度は5000〜10000倍前後で偽陽性を少なくする目的で低めに設定されている検査手法です。

 

・オルトトリジン法

オルトトリジンアルコール溶液、氷酢酸、水を等量加えた試薬に、過酸化水素水と糞便液を加えて発色させる検査手法です。

 

オルトトリジン法は1000万倍と感度が非常に高いので、偽陽性が出やすくなっています。簡易法としてはヘマテストやシオノギA法などが実用的です。

 

・その他

ベンチジン法(100万倍の感度)、ピラミドン法(8万倍の感度)、フェノールフタレン法(1000万倍の感度)などもありますが、現在はほとんど使用されていない手法です。

 

以上の化学的便潜血反応は、肉類、魚類、緑色野菜、還元鉄、ビタミン剤、下剤などの摂取で陽性化するため、採便3日前から食事制限を行う必要があります。

 

 

 

免疫学的便潜血反応

1984年に我が国で行われるようになってから、多数の検査キットが発売されています。

 

免疫学的便潜血反応検査は、ヒトのヘモグロビンに対する抗体と、糞便中のヘモグロビンとを特異的に反応させる方法です。

 

種々の免疫便潜血検査の方法があり、必ずしもその抗体の特異性や方法などが明確ではないので、客観的に成績を評価しにくい、という点はあります。

 

特異性を左右する要因として、抗ヘモグロビン抗体の特異性、ヘモグロビン検出感度、検体採取料などがあります。

 

感度、特異度に関しては免疫学的便潜血検査のほうが化学法にくらべて優れているといわれています。

 

そうはいっても、大腸癌の早期スクリーニングに対しては約半数が偽陰性となり、進行癌でも1回では陽性にならないケースもあります。

 

採便方法にも注意が必要で、検体を自分でとることが多いので、採便の場所、便の量によっても結果が異なることもあり、何回かにわけて検査が行われることもあります。

 

免疫学的便潜血反応が陽性とでた患者に対しては、下部消化管出血をまず考え、大腸の検査を進めていきます。

 

まず直腸指診、直腸鏡、次に注腸造影検査、大腸内視鏡検査を行います。

 

大腸に出血源の無い場合は、胃、十二指腸、小腸など上部消化管の検索を進めていきます。