胃切除後症候群とは

胃がんなどの疾患で、胃切除手術後に起こる様々な合併症の総称を胃切除後症候群と言います。

 

胃切除による臓器脱落症状や、食事通路の人為的再建による障害があります。

 

具体的には、ダンピング症候群、小胃症候群、下痢、消化不良、鉄、カルシウム、ビタミンD、ビタミンB12などの吸収障害による鉄欠乏性貧血、巨赤芽球貧血、骨病変などは頻度も高く重要な問題となっています。

 

それぞれ具体的に説明していきます。

 

 

ダンピング症候群

胃切除、胃腸吻合、幽門形成術後に、高張な食物が急速に腸内に入る為に生じます。

 

手術後ある程度十分の摂食を始めた時に発症することが多く、徐々に軽快する傾向がありますが、稀に術後、数年を経て発症する場合もあり、早期ダンピング症候群と後期ダンピング症候群とにわかれます。

 

1、早期ダンピング症候群

我が国では10〜20%の頻度で発症します。食後20〜30分で生じ、1〜2時間持続します。

原因としては、高張な食事が急速に入ったため、細胞外液が浸透圧の影響で消化管内腔に移動し、循環血液量が低下します。また、急速な壁の進展により、消化管ホルモンが急激に分泌されます。

 

症状としては、腹痛、嘔吐、頻脈、発汗、顔面紅潮、めまいなどを訴えます。

 

治療方法は、食事療法のみで軽快する事が多く、手術を必要とするケースは稀です。具体的には、食事回数を増やし、1回の摂取量減らすこと、ゆっくり時間をかけて食べること。糖質を減らし、食事中の水分は控えること、高タンパク、高脂肪、低糖質食を心がけるようにすることに注意します。

 

また、消化管運動抑制の目的で副交感神経遮断薬や、消化管ホルモンであるセロトニン、ヒスタミン、ブラジキニンの拮抗薬を用います。

 

手術療法としては、吻合部分の外科的治療を行います。

 

 

2、後期ダンピング症候群

我が国では1〜5%の頻度で認められ、食後2〜3時間に生じ、30〜40分持続します。

 

発生機序は、食事による一過性高血糖からインスリンの過剰分泌により低血糖症状が起こります。

 

検査はダンピング誘発試験という検査を行います。50%ブドウ糖液100〜200mlを飲用し、その後の低血糖出現の有無をみます。症状の発現時は、血糖値が50mg/dl以下となり、血清カリウムが低下します。

 

治療方法は、食事療法で高タンパク、高脂肪、低糖質食や、少量の摂取量で食事回数を増やす分割食を行います。

 

早期ダンピング症候群も後期ダンピング症候群も、食後には横になって安静にすることが重要です。また、精神神経症的な傾向を持った患者に多くみられ、心理的治療は重要になってきます。

 

 

吸収不良症候群

無胃性貧血といい、胃切除により、血液の造成に必要な栄養素の摂取障害で貧血が起こります。具体的には鉄欠乏性貧血と巨赤芽球性貧血があります。

 

1、鉄欠乏性貧血

胃切除術後から3年以内に発生します。胃酸、ペプシンの低下が鉄分の吸収障害を引き起こすことで発症します。

 

2、巨赤芽球性貧血

胃切除術後から3〜10年で発症します。ビタミンB12欠乏による貧血で、胃全摘術後は、鉄分、ビタミンB12の投与が必要になります。

 

 

胃切除後骨病変

胃切除後、下痢傾向が続き、腰痛を伴います。下痢を生じやすいためビタミンDを含む乳製品の摂取低下や、胃切除後はカルシウム吸収部位である十二指腸、上部空腸のバイパス手術を行うことで、カルシウム、ビタミンD、マグネシウムの低下を来たし、骨代謝障害を生じます。

 

治療法としては、乳酸カルシウムと活性型ビタミンDの投与を行います。

 

胃切除後の長期生存例の増加、骨代謝障害に対する検査法の普及によって胃がん術後の長期管理上の問題点として注目されるようになっています。

 

 

術後吻合部潰瘍

現在、最も多い胃がんに対する胃切除術後に、減酸が不十分な手術の為に起こります。

 

潰瘍は吻合部に小腸側に生じます。

 

治療はまずは保存的に行われて、H2ブロッカーという酸分泌抑制薬を用います。

 

 

逆流性食道炎

胃全摘後、噴門(胃の入り口)、幽門(胃の出口)機能喪失により、胆汁や膵液などの十二指腸内容の食道への逆流により起こり、夜間から明け方に増悪します。

 

治療は保存的治療が原則となります。