急にお腹が痛くなってトイレに駆け込んだけど、何も出ず下痢もしていない。けれど相変わらず腹痛は続いているという経験をしたことはありませんか?

 

いっそのこと下痢でもなんでも出てくれれば少しは痛みが和らぎそうなのに、どうしたらいいのか分からず辛い時間が長引いてしまいますよね。

 

このような場合の原因や対処法にはどのようなものがあるのでしょうか?

 

ちなみに、病院の外来をしていると、「腹痛だけ」の場合と「腹痛+下痢」の場合の両方の患者さんがいらっしゃいますが、ほとんどの医師もそうだと思いますが「腹痛だけ」の場合の方が緊張します。それは、注意したほうが良い病気である確率が高いからです。

 

 

 

腹痛は続くけど下痢ではないのはどうして?

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まずは腹痛が起こる仕組みと下痢が起こる仕組みについてお伝えしたいと思います。

 

≪腹痛のしくみ≫

痛みというのは何らかの異常を知らせる体からのサインです。腹痛はお腹の中で異常が起こっていることを伝えていることが多いのですがそうでもない場合もあるので注意が必要です。

 

腹痛には大きく分けて「体性痛」「内臓痛」「関連痛」の3種類があります。

 

「体性痛」とは、お腹の臓器が炎症を起こして、腹壁や腸と腸の間にある膜が刺激されることによって起こる腹痛です。痛みの発生が狭い範囲に限られていることが多いです。うずくまってしまう程の鋭く強い痛みが続くこともあります。

ギリギリとした突き刺すような痛みで、ずっと続く強い痛みであることが多く、動いても改善しないのが特徴です。この痛みの場合は「外科腹」と呼ばれる、手術が必要な病気であることがあり検査が必要です。軽い力で押すだけでも痛かったり、歩いたら痛みが響くような場合は、早急に病院に受診することをおすすめします。

 

病気としては「腹膜炎」になるような
・虫垂炎(盲腸)の重症なもの
・急性腹膜炎
・消化管穿孔(胃潰瘍や憩室という部分から腸に穴が開く状態)
などのように、重症な病気が多いです。

 

「内臓痛」とは、胃や腸などの臓器が収縮したり痙攣(けいれん)を起こしたりすることで起こります。間欠的でお腹に違和感を覚えるような症状から激しい腹痛まで様々です。痛みの部位が特定しにくく、お腹全体が痛い・下腹が痛いなど場所をはっきりと特定できないような痛みの場合は内臓痛であることが多いです。

・急性胃腸炎(いわゆる胃腸風邪も含めて)
・食中毒
・胆石発作
・尿管結石症(背中だけでなく、おなかの下のほうが痛くなることもあります)
・便秘症
・虚血性大腸炎(50歳以上の場合に考える)

など、いろいろな病気が原因で起こります。

 

「関連痛」とは、内臓の痛みを伝える神経が皮膚の痛みを伝える神経と合流することで起こる痛みです。痛みの発生源となっている内臓から離れた場所で痛みを感じることがあります。

 

 

≪下痢のしくみ≫

下痢とはどのような便の状態を指すのでしょうか。理想的な便の固さは便の中の水分量が70~80%といわれているのですが、様々な原因で便の中の水分量が増え、90%以上になり水のようになった便を下痢と呼んでいます。

 

  • 下痢になる原因の1つ目は、暴飲暴食による消化不良や体が冷えたことにより自律神経が乱れ、腸が異常収縮してしまうことがあります。これらは誰もが1度は経験したことのある下痢でだと思います。病気ではなく一過性で何度か下痢をすれば治ってしまうことが多い下痢です。

 

  • 2つ目の原因は、細菌やウイルスが体内に入り感染することで起こる感染性胃腸炎です。O-157による食当たりやノロウイルス・ロタウイルスなどが有名ですね。

 

  • 3つ目の原因としては、ストレスなどが原因で起こりやすい過敏性腸症候群があります。

 

  • 4つ目の原因は、クローン病や潰瘍性大腸炎、バセドウ病などのように、重い病気が原因で下痢が起こっている場合です。

  • 5つ目の原因は、血便となるような胃潰瘍や憩室出血などの血による便のゆるみです。

 

4と5の場合が最も恐ろしく、なるべく速やかに検査を行い適切な治療を開始する必要があります。ただし、一刻を争うような病気でないことも多いです。(5の場合は便の色が変でないことを聞けばよいため)

参考:便の色が黒い場合便の色が赤い場合
下痢がおこるメカニズムは、一言で言うと腸での水分調節機能の不具合です。健康な腸は水分や栄養をしっかりと吸収し、残った不要なものを便として体外に排出します。

 

腸を通過する水分の99%は腸で吸収され、残りの1%の水分が便に含まれることで理想的な固さの便となります。

 

下痢が起こる仕組みには3種類あります。

 

  1. 運動亢進性下痢(うんどうこうしんせいげり)…腸の運動が活発になると、内容物が腸を通過するスピードが速くなり十分に水分を吸収できないまま排泄されてしまうために便の水分量が多くなってしまう下痢です。
  2. 浸透圧性下痢(しんとうあつせいげり)…腸自体の水分を吸収する働きが低下してしまっている場合です。
  3. 分泌性下痢(ぶんぴつせいげり)…腸から水分の分泌量が増えしまった場合も、便として排出する水分量が増えてしまい下痢になってしまいます。

 

腹痛は続いているのに下痢はないということは、腸の中に有害なものが入ってきため、それを追い出そうとして腹痛が起こっている訳ではないということが分かります。そのためウイルス性腸炎や食中毒などの感染性胃腸炎は考えにくいです。

 

(救急外来や内科外来にいらっしゃる方の一番多い原因はウイルス性の胃腸炎で、その場合は経過観察で問題がないことが多いのです。そのため冒頭の下痢がある腹痛の方が軽症な確率が高いからホッとするという感覚はここからきています)

 

また腸の水分吸収機能が不十分ではないことが分かるので、胃や腸以外の異常で腹痛が起こっている可能性も高くなります。

 

お腹の中には胃や腸以外にも、肝臓、膵臓、脾臓、胆のう、腎臓、膀胱、子宮など様々な臓器があります。

 

下痢っぽいのに出ない!腹痛もあるのになぜ?原因や対処法を解説!

 

また臓器同士は絡まないように腹膜や腸間膜に包まれているのですが、その膜も異常をきたすと腹痛を引き起こします。膜の痛みは激痛となることと手術が必要な病気であることが多いので、緊張する病気です。これらの異常(病気)も視野に入れて腹痛の原因を考える必要がでてきます。

 

下痢を伴わない腹痛の原因は?過敏性腸炎や原因となる病気

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胃や腸が原因で下痢を伴わない場合は、過敏性胃腸炎(過敏性腸症候群)の可能性があります。

 

過敏性胃腸炎とは、下痢や便秘などの症状が長く続いているにも関わらず、病院で検査を受けても腸などに異常がみられない病気で、プレッシャーやストレスなどの精神的なダメージが原因で症状が現れていると考えられています。

 

下痢型、便秘型、下痢と便秘を繰り返す混合型があるのですが、下痢症状がないのであれば便秘型の可能性が考えられます。過敏性腸症候群の人は、日本人では10%~20%もいると言われており、決して珍しい病気ではなく、他人ごとではありません。

 

なぜ、ストレスなどの精神的なもので下痢や便秘、吐き気などの消化器症状が引き起こされるのかというと、腸には脳と同じ神経が多く分布されており、その神経は自律神経でつながっています。これを脳腸相関といいます。

 

緊張やストレス、プレッシャーなどは自律神経を通って腸に伝わり、腸は異常に収縮したり、運動を更新させたりしてしまいます。このため腹痛が起こり下痢や便秘が起こるのです。

 

逆に腹痛や腸の異常は脳が敏感に察知しストレスだと感じてしまいます。こうして悪循環が生まれ、身体検査では異常を見つけることができない長引く消化器症状となるのです。

 

また、過敏性腸症候群とまではいかなくても、頑固な便秘で腹痛が起こることもあります。
便が腸の中に残っていると3日程で腐敗してガスを発生させます。そのガスが腸の中にどんどん溜まると、腸を圧迫し腹痛を引き起こします。

 

ガスが出るのを何度も我慢することでもガスが溜まりやすい体質になってしまうと言われています。

 

他には急性胃炎や逆流性食道炎、急性虫垂炎(盲腸)など食道や胃腸のどこかが炎症を起こしている場合も下痢はないのに腹痛が続きます。

 

胃や腸以外の臓器が原因の腹痛は下痢が起こらないことが多いです。胆嚢や膵臓や腎臓や腹膜など便を直接作っていないところの病気である、胆のう炎、急性膵炎、腹膜炎、尿管結石症などが考えられます。

 

そのため、下痢がない腹痛を見たら、腹部の超音波検査(エコー検査)やCT検査で胆嚢や膵臓や腎臓や盲腸や血管に病気が隠れていないか、血液検査で肝臓の数値(ASTやALT)や膵臓の数値(アミラーゼやリパーゼ)や胆嚢の数値(ALPやγGTP)などを見ます。その結果で、内臓の病気ではないかどうか、重症な病気の初期症状ではないかどうかを見ます。

 

ただ、実際には重症な病気ではなく、胃腸炎の初期症状や食事によるもの、便秘症、過敏性腸炎であるので経過をみるよう指示されることも多いです。

 

腹痛が続く時の対処法を解説!

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まずはすぐに出来る対処法を紹介します。この腹痛は大丈夫そうだろう!というときに試してみてください。

 

  1. 深呼吸する
    深呼吸して落ち着きましょう。その時にお腹に手を当ててさすると患部の血行が良くなり深呼吸で酸素も取り込まれるので痛みが和らぎます。
  2. 腹圧を下げる
    座っている姿勢よりも立っている方が腹圧は下がります。さらに横になることができればその方がよいです。また前かがみの姿勢も腹圧を下げるので、痛みが和らぎます。
  3. お腹を温める
    カイロや腹巻などがあればお腹を温めましょう。お腹と同時に腰を温めるのも効果的です。また温かいお茶などをゆっくり飲んで内側から温めるのもよいでしょう。
  4. ツボを押す
    腹痛に効く 合谷(ごうこく) と呼ばれるツボを押します。手の親指と人差し指の分かれる所から少し人差し指よりのところにくぼみがあるのですが、そこが合谷です。また 温溜(おんる) と呼ばれるツボも腹痛緩和に効果があります。肘の内側から手首の親指側にある骨の中間にあります。腕をつまむようにして親指で押してください。他には 気海(きかい) と呼ばれるツボがあります。おへそ1~2cm下にあるツボです。どのつぼも、ゆっくり3秒ほど押したらはなして、また3秒押してを繰り返します。

 

それでもまったく改善しないようなら再度の病院受診をおすすめしますし、胃薬や整腸剤などを処方されているのであれば、薬の力を借りましょう。

 

特に刺すように激しい痛みに襲われた時や腹痛に加えて嘔吐が激しいとき、血便が出たときなどは緊急性が高いですので、放置せずに病院で検査を受けてください。

 

まとめ

一言で腹痛と言っても原因は様々です。

 

お腹は精神的な部分とも深くつながっているため、体の症状として現れやすいですし、お腹の中には様々な臓器が入っているため腹痛を引き起こす原因も多くなります。自分に合った対処法で腹痛を乗り切れれば良いですが、無理は禁物。

 

腹痛が長引く場合や症状が激しいときは腹痛の専門である消化器内科を受診し、きちんと診てもらいましょう。